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公的健康保険制度で“医療費無料”のオーストリア、プライベート健康保険の役割は?

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全てのオーストリア国民は原則として、国が定めている公的健康保険への強制加入義務があります。

公的健康保険は、「保障内容をあれこれ比較して自分で選ぶ」という性質のものではなく、自営者か被雇用者か あるいは 職種および所在地・居住地によって自動的に決められていますが、その中でもっとも加入者数が多く、私たちが普段の生活の中でも耳にする機会の多い保険が「GKK(Gebietskrankenkasse: ゲビーツ クランケンカッセ)」と呼ばれる公的健康保険です。

長らく GKK(Gebietskrankenkasse: ゲビーツ クランケンカッセと呼ばれてきたオーストリアの公的健康保険ですが、2020年1月1日に名称・組織が改定され、「Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK): オーストリア健康保険」と呼ばれるようになりました。

外国人であっても、オーストリアで仕事をする、あるいは学ぶ場合には、健康保険に加入する必要があります(この場合、必ずしも公的健康保険である必要はありませんが)
滞在許可を申請する際も、“オーストリア国内で有効な健康保険に加入しているか”が厳しくチェックされます。

例えばオーストリア国内の企業に赴任する場合、公的健康保険の手続きは現地企業が行い、保険料は給与から自動的に天引きされます。職種にもよりますが、おそらく大部分の方が上記の「GKK」「Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK): オーストリア健康保険」に加入することになるかと思います。

また、オーストリアの大学に留学する場合も、GKK Österreichische Gesundheitskasse の学生保険に加入することができます(会社に勤める従業員と違い、こちらは自動加入になる訳ではありません)。

この公的健康保険に加入した上で、さらにプラスアルファの診療を求めたい場合、あるいは何らかの事情で公的健康保険に加入できないという場合は、民間保険会社が提供するプライベート健康保険に加入することになります。

つまりオーストリアでは、

  • 公的健康保険のみに加入
  • 公的健康保険 および それを補完するプライベート健康保険の両方に加入
  • プライベート健康保険のみに加入(特に外国人の場合)

という3つの加入スタイルがあるということになりますが、公的健康保険とプライベート健康保険にはどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、公的健康保険の概要と、それを補完するプライベート健康保険の役割とは何なのかについて考えてみたいと思います。

(オーストリアの基本的な医療システムについての知識があると、保険のあり方がよりわかりやすく理解できるかと思います。
オーストリアの基本的な医療システムについては、下の記事をご参照ください。)

公的健康保険

オーストリアの公的健康保険は、勤め先の所在地(あるいは自分が住んでいる居住地)自営者か被雇用者か あるいは 職種によって自動的に決まっており、<自分で保障内容を比較して選択する><入るか入らないか検討する>という性質の任意保険ではなく、加入が義務付けられています。

WGKKについて Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK): オーストリア健康保険について

公的健康保険は、各州名のついた9地域保険と、職種によって分けられた6つの保険、それ以外にも自営業者、公務員、農業従事者の保険などに分かれていますが、もっとも加入者数が多いのが地域保健(GKK)、その中でも特にウィーンの地域保険(WGKK)です。

上にも書きましたように、オーストリアで長らく採用されてきた公的健康保険システムが変わり、私たち在住日本人にもなじみが深かった GKK(Gebietskrankenkasse: ゲビーツ クランケンカッセ)は、他保険等と統合され、新たに Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK): オーストリア健康保険 と呼ばれるようになりました。

(以前の GKK と 、統合後の Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK) との詳しい違いについては、申し訳ないのですが まだあまりよく把握していません。

実際に保険を使っている者として、特に目に見えた制度の違いは感じていませんので、内容はほとんど変わっていないのだろう…という前提で下↓の記事をそのまま残しておきます(自分で気づいた違いについては、随時内容を更新していきますが…)。

もし、「いやいや、ここは大きく変わったよ!」などご存じの方がいらっしゃいましたら、フォーラムお問い合わせフォーム から、情報を共有していただけると嬉しいです。 )

会社に勤める従業員や年金生活者の方などが加入している保険で、オーストリア在住の日本の方も多く加入していることと思います。

(9地域保健はすべて似通った加入条件・保証内容ですが、細かな違いはありますので、ここではウィーンの地域保健<WGKK>に的を絞って書いていきたいと思います。)

会社に勤める従業員や年金生活者の方は、個人で特別な手続きをする必要はなく、自動的に強制加入となりますが、従業員のご家族の保険に関しては、被保険者(この場合は従業員ご本人になりますが)の方が自ら直接、Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK)で加入申請の手続きをすることになります。

学生の方は、学生用Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK)への加入が可能です。加入の可・不可は学生の状態(正規学生、聴講生、語学学校など、学生と言ってもいろいろありますよね)によって違ってきますので、詳しくはÖsterreichische Gesundheitskasse(ÖGK)のウェブサイトなどでご確認ください。

学生用Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK) 保険

学生用Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK)は、月々の保険料が約62ユーロ程度(2020年現在)と、格安な保険料になっています。

Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK)に任意で加入する場合、通常、保険加入日から6ヶ月間の待機期間(保険料が支払われない期間)がありますので注意が必要です(例外もあります。また、妊娠の場合、待機期間はもっと長くなります)。

保険適用の範囲は?

Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK)の場合、基本的な診療・治療はすべて無料です。
基本的といっても“必要最低限”という意味ではありません。ほぼどんな診療・治療を受けてもすべてタダ。
風邪、ケガ、骨折、妊娠・出産、腰痛、膝関節症、ガン、ペースメーカー植込み、糖尿病、病後のケアからリハビリ…、どこまで行ってもタダという感じです。

入院の場合、一日12~19ユーロの入院滞在費を支払う必要がありますが(出産など例外もあります)、1カレンダーイヤーに最長28日までと決まっており、入院がそれ以上長くなる場合は保険が適用されますので、入院滞在費が青天井に高くなるという心配はありません。

一方、歯の治療に関しては、“保険があまり効かない”と言われることが多いようです。
詰め物もアマルガムなら保険適用。
白いプラスチック(強度は低くー耐久年数は4~8年と言われているそうですー、経年変化で黄色っぽくなったりします)の場合、前歯など見える部分の歯は保険の対象になりますが、それ以外の場合は1本100ユーロ前後かかるという印象です。正確には60~200ユーロとなっているそうです。
インプラントも保険の対象外ということで、1本約2000ユーロとのこと。

また、歯の治療の際の麻酔注射も、抜歯や根の治療を受ける場合は保険適用になりますが、“歯を削る”ぐらいだと保険の対象にならなかったりします(子供は例外です)。
ただ、保険適用外になったとしても、支払いに窮するような、目玉が飛び出るような額にはならないかと思います。数~数十ユーロぐらいといった感じでしょうか。

問題点は?

通常のケガや疾病の範囲でしたら、“これ以上何を望むか”というぐらい手厚く保障されている公的健康保険ですが、“無料”だけあって、診療所(専門医)の予約がなかなか取れないということがあります。
一般医の場合、予約不要の場合がほとんどですので、混雑した待合室で1~2時間も待てば診療してもらえますが、予約必須の専門医では、その予約がなかなか取れないんですよね…。

もちろん、人気のある専門医であっても、運が良ければすぐに(あるいは少しの日数待てば)診てもらえることもありますし、また逆に、あまり人気のない専門医を狙って予約を入れるという手もありますが、「あまり人気がないのに行くってのもどうもなぁ…。」と思ってしまいますよね。

この“待たされる”問題手術の際にも言えることで、急を要さない手術の場合、数ヶ月待たされることも多いです。公的健康保険では“2ヶ月ほど先”と言われた膝関節の手術が、プライベート健康保険で受診したところ3日後に手術してもらえた、とか、そういう話はままありますね。

ただ、緊急を要する手術の場合は、可及的速やかに手術が行われ、そこに“プライベート健康保険だから優先する”などの優遇措置はないと、一応そういうことにはなっているそうです。

すべての人が無料で、高度な医療を平等に享受でき、“お金さえあれば治ったのに…”的な、基本的治療の貧富による差別はないというのが、オーストリアの公的健康保険が謳っているところとなっているようです。

また、プライベートの医師が、保険医(公的健康保険が効く医師)より優秀かつ人格的にも素晴らしいのかと言うと、そういった考え方も見当外れです。保険医でもひじょうに優秀かつ善意の塊のような先生も多くいらっしゃる訳で、良い先生と出会え、公的健康保険の診療で十分と思えるかどうかは、本当に“運”とも言えますよね~…。

“結局最後は運か!?運が良ければ、プライベート健康保険の存在意義はないのか!??”っていうのも納得しかねると思いますので、次にプライベート保険が決定的に有利な点について、書いてみたいと思います。

プライベート健康保険

加入率はどれぐらい?

2013年の調査ということで、少し古い数字になりますが、オーストリアでは約35%の人がプライベート健康保険に加入しているそうです。

正直、“へぇ、35%もいるのか…”とちょっとびっくりしました。私の友人・知人に聞いてみても、プライベート健康保険に加入しているという人はほとんど聞いたことがありません。以前、職場の上司(オーストリア人/高所得のシングルマザー)にも聞いてみましたが、「あんなのは、スノッブな連中が入るものよっ!」と一笑に付されましたね。笑

実際、“約3/4のオーストリア人が公的健康保険に満足”、“約2/3のオーストリア人はプライベート健康保険への加入は念頭になし”と、そういう調査結果があるそうです(Marketagent.com)。

加入の理由は?

逆に、プライベート健康保険も選択肢として考えている人が1/3いる訳ですが、それはやはり、公的健康保険だけでは満足できない点があるから。
公的健康保険に関して最も多い不満・ストレスが、上にも書きましたようにとにかく“待たされる”ことだそうです。専門医の予約が取りにくく、手術やその他の治療も待たされる…。

緊急の場合は、すぐに処置してもらえます。
※※知人に、“臍ヘルニア”で手術した人がいるのですが、緊急ではないとのことで2ヶ月待ちと言われたそうです。“緊急ではない”と判断されても、お臍は出てくるし、痛みもあるし…。
結局、手術予定日の前に激しい痛みに襲われ、病院の救急外来に駆け込み応急処置、その後はすぐ、翌週に手術の予定を入れてもらった、なんていう人もいます。

それだったら、少し高い保険料を払ってでも、すぐに診てもらえ、必要ならばすぐに手術してもらえるプライベート健康保険に加入する、という人が多いようです。

また、入院時の部屋が優遇される、通常6~8人部屋に詰め込まれるところを、1~2人部屋で過ごさせてもらえる、なんていう優遇措置もあります(Sonderklasseー特別クラスーといいます)。

6~8人部屋で過ごすよりは、1~2部屋の方が確実に落ち着くでしょうね。

私の知人・友人の場合だと、骨折程度(程度と言っては申し訳ないですが、数週間で必ず治るものですし、足の骨以外は健康そのものでしたので…)だとやはり6~8人部屋、ただ、病気が重く、感染症なども懸念されるような場合は、公的健康保険ではあっても(追加料金なく)個室があてがわれていました。

待ち時間が短くて済むのも、個室をあてがってもらえるというのも、それなりに嬉しい優遇措置ではありますが、私が個人的に一番ポイントが高いと思いのは、医師の選択の幅が広がる、ということだと思います。

公的健康保険では対象とならない“権威のある”医師(大病院の院長先生とか、そんな感じの方ですね)、保険医だけではなく、Wahlarzt および プライベートの医師による診療や手術がプライベート健康保険でカバーされますので、“基本的な治療としては同じことをするだけだ。お金を出せば治る確率が上がる訳ではない”と力説されても(実際、一般的にはこのように謳われている訳ですが)、やはり“権威のある医師に診てもらえる”という安心感は、病気の人、またそのご家族にとっては、大きな精神的支えとなることも多々あるかと思います。

“精神的支えなどはどうでもいい、少し待っても治してもらえるなら別にいい。時間に追われるような診察でも構わない。とにかく治療してもらえるならそれでいい”という人も少なからずいると思いますので、そういう人はプライベート健康保険はまったく不要でしょうね。

また、歯科に関しては、プライベート健康保険が圧倒的に有利と思える点(通常は高額な詰め物も保険でカバーされますし、定期的に歯の掃除などもできればなお良いですし…)が多々ありそうですが、歯の治療をカバーする保険というのが、これまた結構高額だそうで、「これを一生払い続けるのか…。それなら頑張って、毎日キレイに歯を磨き上げた方がいいのでは…。」と思ったりもしてしまいます。

あとは、心療内科や精神科のカウンセリング、依存症の治療などは、公的健康保険が簡単には効きにくい分野ですので、将来的にそのような心配がなくもない…という気配を感じている方は、プライベート健康保険を選択肢の一つとして考えても損はないかもしれません。

ある健康経済学者の方の言によると、“私立病院は、入院時の部屋から医師の選択まで、確かに<柔軟性が高い>と言えるが、それは予想外の事態が起きず、通常の診療・治療で収まる場合の話。より充実した設備が整っているのは公立病院であり、不測の事態に見舞われた場合は、公立病院の参入が必須となる”のだそう。

こんな話を聞くと、なんだかさらにプライベート健康保険の存在意義が薄れる感じがしますが、そうは言ってもやはりどうしても、“プライベート健康保険に加入する=お金を出せる人が優遇される特別な治療方法、心情的な優遇措置があるのではないか”という思いは、オーストリア人の間でも抜きがたいようで、私のような、高い福祉水準であるにもかかわらず、民間保険への依存度が高い日本から来た人間にとってはなお、加入すべきか否か、頭を悩ます問題となっています(いや、お金が唸るほどあれば迷わず加入するんですがね…)。

オーストリアの民間保険会社

加入者数の多い、大手民間保険会社をいくつか挙げておきます。
プライベート保険が必要になった場合は、各保険会社の事務所を直接訪ねますと、すぐに相談にのってもらえるかと思いますので、まずは各保険会社の資料を比較検討してみてください。

また、オーストリアで一般的なのは、自分にとって最適な保険を比較検討してもらう目的で保険ブローカー(保険仲立人/保険の委託販売を行う“保険代理店”とは違います)を利用し、保険会社との仲立ちをしてもらうという方法です。
ここでは深入りしませんが、保険ブローカーを利用するという方法も一選択肢として検討されると、慣れない保険契約の際には何かと安心かと思います。

(保険会社名の後ろのパーセンテージは、全プライベート保険利用者100%に対する割合です<2019年調査>。出典: statista

上記5社ほど大手ではありませんが、以下の保険会社も有名です。

おわりに

以上、オーストリアの公的健康保険の概要を眺めつつ、プライベート健康保険の役割について書いてみました。

結局プライベート保険に入るべきか否かの答えにはなっていませんが、これは当然ですね…。
病気治療に関するご自身の主義や自分自身の健康問題、子供がいるのかどうかなど、様々な要因を考え合わせ、また、保険ブローカーなど専門家の方と生涯プランについて相談しながら、自分にとってのベストを考えていくものだと思います。

ただ、保険の概要や、こちらでの受け止められ方を見ていくことで、加入すべきかどうかの判断材料にはなるかと思いますので、この記事も、皆さんが保険について検討される際の何らかの判断材料になれば嬉しく思います。

保険に関する情報についてさらにアップデートがありましたら、またこちらでご紹介していきたいと思います。
皆さんも、「私は保険でこんな経験をした!よかった! or 必要なかった!」など教えていただけるご体験がありましたら、ぜひフォーラムでその思いの丈を語っていただけますと大変嬉しいです。

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名古屋市出身、ウィーン在住。未就学児を子育て中です。
明確な人生計画を持って…というよりは、流れのままになんとかなる的な人生を送っていましたが、とにかく人に恵まれ、大学研究室 → 文化交流機構 → 大手日系企業という流れできまして、現在 会社勤めの方は育児休暇中です。
オーストリアと出会わずに生きている自分が想像できないほど、オーストリアに深い思い入れがある人間です。→ 少しだけ長めのプロフィール