オーストリアの医療システムは、日本のものとは大きな違いがあり、「こんなシステムでなりたつの?病気になってもすぐ診てもらえるの?」と戸惑われることも多いかと思います。
日本のように、具合が悪くなり次第、何科であってもすぐに診てもらえる病院がそこかしこにあるというシステムではありません。
そのため、最初は不安に思われるかもしれませんが、慣れれば「こういうものだ」と理解でき、それなりに便利に使えるようになっていきます。
公的保険に入っていれば基本的な診療はすべて無料、診察が終わったらお会計を待つということもなくサササッと診療所を後にすることができます。
慣れるまで「本当にいいの??」と不安になるほどですが、風邪であろうが骨折であろうが出産であろうが、基本的な治療はすべて無料というのは、患者さんに優しいシステムですね(その分、税金の高さは半端ないですが)。
そんな医療システムの概要について、見ていきたいと思います。
医療システムの概要
オーストリアの医療システムは、
- 病院(Spital または Krankenhaus)
- 検査所(Labor)
- 医師 <一般医と専門医>
→ 一般医(Praktischer Arzt, Allgemeinarzt, Hausarzt)
→ 専門医(Facharzt) - 薬局(Apotheke)
に分かれています。
医師 <一般医と専門医>
私たちが「風邪をひいた」、「背中が痛い」、「ネコに引っかかれたんだけど大丈夫かなぁ」など、日々起こりがちな不調で最初にお世話になるのが医師(一般医)です。
日本だと、風邪=内科、腰痛=整形外科、外傷=外科(内科 or 皮膚科)の病院を探そうかというシチュエーションですよね。
それが、最初はとにかく医師(一般医)へ、というのがオーストリアと日本との大きな違いになります。
一般医は、日本でいう家庭医のような存在ですね。
一般医の診察で予約が必要だった経験はありません。
その分、時間帯によってはずいぶん待たされることもあります。
1時間~1時間半ぐらいは結構普通に待たされることも多いので、高熱でフラフラしているような時は結構辛いですね…。
一般医での診察後、必要に応じて検査所(血液検査など)や専門医(整形外科やレントゲン技師など)への紹介状を受け取り、次の診療段階へ進みます。
(もちろん、一般医の処方する薬で対処できる場合は一般医の診療までで“おしまい”です。次の検査所や専門医へは進みません。)
紹介状と言っても、「ここの整形外科で受診すること」といったピンポイント的な指示はありませんでしたね。
ですので、自分で行きやすい検査所や専門医を探して予約を入れることになります。
一般医とは違い、専門医で診察を受ける場合はたいてい予約が必要ですが、血液検査をするための検査所では、予約は必要なかったですね。
(※一般医を通さず、直接専門医を受診することも可能ですが、予約が必須なのは変わりません。
歯科医などは、一般医を通さず訪ねるのが一般的ですし、自分の症状が明らかに特定の専門医分野だとわかっている場合<皮膚科なども当てはまる場合が多いですね>は、直接専門医を訪ねることもできます。)
一般医、専門医共に、診療時間が午前中のみだったり午後のみだったりと、日本の感覚からするとずいぶん短い印象です。
ウェブで診療時間を確認してから行くようにしましょう。
また、一般医、専門医共に、アパートの建物の中に、一般の住宅と普通に並んであったりします。うちは5号室で、お隣りの6号室は一般医の診療所とか、そういう感じですね。
ですので、日本の病院のように探さなくても見つかるような目立ち方はしていませんが、アパート入り口前には必ず看板が出ていますので見つからないという心配はありません。
一般のお宅を訪ねるのと同じように、入り口前のオートロックのブザーを鳴らし、アパート内に入ることになります。
(入り口前のオートロックのブザーを鳴らすだけで、自動的に入り口ドアが開くようになっているところが多いようです。一般的なオートロックのように、誰かがインターホンで操作してくれるのを待つ…というのは必要ないことが多いです。)
ちなみに、オーストリアの公的保険を使われる場合は“四半期(3ヶ月)ルール”に注意する必要があります。
四半期はそれぞれ、1月~3月、4月~6月、7月~9月、10月~12月と分けられていますが、一度決めた(訪ねた)一般医は、この1四半期の間は変更することができません。
専門医については、1四半期の間に、分野の異なる3診療所(=専門医)まで受診可能。
歯科医については特に何も定められておらず、1四半期の間に複数の歯科医を受診することも可能です。
(なお、この“四半期(3ヶ月)ルール”は原則ですので、事情によって、また手続きによっては変更もまったく不可能という訳ではありません。)
病院
専門医での診察の後、さらなる高度な検査が必要と判断されると、今度は病院の紹介状を書いてもらうことになります。
オーストリアでは、ここでようやく病院にたどり着く訳ですね。
あるいは、「指を激しく切り縫う必要がありそう」、「深爪からばい菌が入り、赤く腫れ上がってきた」、「軽いむち打ちだろうと放っておいたら、翌朝首がまったく回らなくなった」など、緊急の治療が必要となる場合がありますよね(はい、全部身内の経験を書いてます…)。
そういう場合は一般医や専門医は通さず、直接病院の救急外来を受診することになります。
薬局
薬局(Apotheke)は、赤い「A」のロゴでお馴染みですね。街中至る所にあります。
医師から、あるいは病院で処方箋を受け取ったら、この薬局で薬を受け取るという流れになります。
医師や病院の近場の薬局である必要はなく、処方箋さえ見せれば、どこの薬局でも同じ薬を購入できます。
良い薬剤師さんの存在は、時にお医者さんより頼りになることがある、なんて言われたりもします。なにせ、薬の専門家が、予約なしで街の至る所で相談にのってくれる訳ですからね。
私も、顔の肌荒れが治らず、皮膚科の予約も「1か月先」、「新規患者は受けて付けていない」などと言われて困っていた時、とりあえず軟膏でもつけておこうかと薬局を訪ねたところ、薬剤師さんが肌荒れを鋭い眼光でしげしげと眺めた後、「最近、洗剤変えなかった?」と。
洗剤による肌荒れに、「そ、そういえば変えた!それにずっと以前、洗剤で肌荒れしたことあったわ!」と思い当たる節があった私は、すぐに元の洗剤に戻し、薬剤師さんに勧めてもらった「肌荒れ時にも使える、乾燥を防ぐ基礎化粧品」をつけてみたところ、ものの数日で肌荒れがスルスルと消えていきました。
薬剤師さんにももちろん良し悪しがありますので、近所の薬局を数軒訪ねてみて、親身になって話を聞いてくれる薬剤師さんを見つけたら、「相談したい場合はココ」と目星を付けておくなんていうのもいいですね。
薬局は薬に限らず、ドクターズコスメや心身の体調を整えるハーブティー、関節保護サポーター、虫除けアイテム、多種多様なのどあめ、バッチフラワー等々、結構いろいろな商品が置いてありますので、一度覗いてみるだけでも楽しいかもしれません。
薬を購入する場合ですが、日本のドラッグストアの感覚で、自分で棚から探して取る…ということはありません。
カウンターで薬剤師の方に欲しい商品、あるいは症状について説明し、薬を出してきてもらう…という方式です。
医師の探し方
ご近所さんや知人に、「どこの病院に行ってる?」と聞いてみるのはとても参考になりますが、その人が何を基準に医師を選んでいるかを聞いてみるのも大事ですね。
以前、ご近所さんに小児科医を紹介してもらったのですが、よくよく聞くと「こちらの話を聞いてくれず、“良い先生”とは言えないかもしれないが、行く目的は簡単な診察と予防接種だけだし、とにかく近いのが何より便利なので行っている」、と…。
これは私的にはアウトでしたね。
医師を探すには、やはりインターネットを使うのがとても便利です。私がいつも使っている定番の医師検索サイトを下にご紹介しますね。
DocFinder
まず一つ目は「DocFinder」というサイト。
このサイト、私の義弟の友人が始めたそうなんですが、数年前は「へぇ、なかなか便利ねぇ」程度に見ていたのが、見る見るうちに口コミ数も増え、医師の方ご自身も積極的に参加されるようなビッグサイトに成長しています。
見やすく、使いやすく、口コミ および それに対する医師からの返答なども掲載されており大変参考になります。
トップページを開いて、
① に何科を探しているのか(例: Praktischer Arzt <一般医>など)
② に探したい場所(例: Wien、1190<郵便番号>など)
を記入し、検索(Findenボタン)をクリック!
ブラウザーが自分の居場所を認識していて、その近場の医師を探したいという場合は、③の診療科をクリックするだけでも近場の医師を検索することができます。
一般医のドイツ語訳
スラッシュ (/) の前は、医師名というか何というんでしょう、眼科だったら”眼科医”という呼び名ですね。スラッシュ (/) の後は診療科名です。
普段の会話では、この医師の呼び名を使うことの方が多いですね。
「Kinderarzt(小児科医)に行った」という言い方が一般的で、「Kinder- und Jugendheilkunde(小児科)に行った」という言い方はしません。
Praktischer Arzt, Allgemeinarzt, Hausarzt / Allgemeinmedizin | 一般医 |
専門医のドイツ語訳(アルファベット順)
Augenarzt / Augenheilkunde und Optometrie | 眼科 |
Chirurg / Chirurgie | 外科 |
Frauenarzt / Frauenheilkunde und Geburtshilfe, Gynäkologie | 婦人科、産婦人科 |
HNO-Arzt / Hals-, Nasen- und Ohrenheilkunde (NHO) | 耳鼻咽喉科 |
Hautarzt / Haut- und Geschlechtskrankheiten, Dermatologie | 皮膚科、皮膚および性病科 |
Internist / Innere Medizin | 内科 |
Kinderarzt / Kinder- und Jugendheilkunde | 小児科 |
Lungenfacharzt / Lungenkrankheiten, Pulmologier | 肺の病気専門(日本だと呼吸器科に当たるんでしょうか…) |
Neurologie und Psychiatrie | 神経科および精神科 |
Orthopäde / Orthopädie und Orthopädische Chirurgie | 整形外科 |
Urologe / Urologie | 泌尿器科 |
Zahnarzt / Zahn, Mund- und Kieferheilkunde | 歯科、口腔外科 |
その他の検索画面の使い方
保険の種類で絞る
下は、「7区(1070)のFrauenarzt(婦人科)」として検索した、検索結果の一部です。
この Krankenkasse(健康保険の種類)をクリックすることで、自分の保険に適した医師に絞れます。
このページを参考にされる日本人の方に関係が深いと思われる健康保険の種類は、GKK Österreichische Gesundheitskasse(ÖGK)、Wahlarzt、Privat でしょうか(Wahlarzt と Privat は保険の種類ではなく、“公的保険は効きませんよ”という医師ですが)。医師を探す際に参考になる保険についての説明は、下の項目で書いています。
※ 画像には GKK と書かれていますが、これは旧称で、現在は ÖGK (Österreichische Gesundheitskasseの略) と表示されます。
対応可能言語をチェックする
対応可能言語で検索することができないのがちょっと不便なのですが、各医師のページには下のように対応可能言語が記載されていることもあります。記載されていないことも結構あるんですがね…。
図の対応可能言語には、ドイツ語、英語、イタリア語、スペイン語と書いてありますが、これって「医師が対応できる言語」だと思うんですよね。
電話で予約受付をしているアシスタントも全言語対応可能ならすごいですが、それはちょっとクオリティーが高すぎです。
これが「医師対応可能言語」として考えると、ほぼすべての医師は英語での対応が可能だと思います(もちろん絶対とは言えませんので、事前に電話・メールなどで確認してくださいね)。
問題はアシスタントで、アシスタントは英語を話さない人も結構います。若い人だと結構話すんですけど、古い診療所でアシスタントも高齢だったりすると、結構な確率で英語が通じないこともありますね。
こんな場合でも、英語でゆっくりゆっくり話しながらなんとか予約を入れているという方もいましたし、予約だけドイツ語のできる知人にお願いするという方もいました。
星評価も参考に
また、コメントがドイツ語のため読めず、どう良いのか・悪いのかがよくわからないという場合は(翻訳サイトを利用すれば、だいたいの感じはつかめるのではないかと思いますが)、下の星評価(ここでは星ではなく、往診カバンのようなデザインですが)も参考になります。
※下は意訳です。
Einfühlungsvermögen | 患者の気持ちに寄り添ってくれる |
Vertrauensverhältnis | 信頼関係を築ける |
Behandlung | 治療技術が信頼できる |
Serviceangebot | 提供サービス(+アルファのサービス。予約方法が便利とか、本来自分ですべきところを先生の方から病院にコンタクトを取ってくれたとか、そういう感じでしょうかね…) |
Praxisausstattung | 施設・機器が充実している or 清潔感がある |
Betreuung in der Praxis | 診療のサポート(医師よりは、スタッフの対応に対する評価でしょうか) |
Wartedauer im Warteraum | 待合室での待ち時間 |
Wartedauer auf Termin | 予約待ちの長さ |
DocFinderを使う際の注意事項
DocFinderを見ていると、各医師ページにずいぶん違いがあるのに気づかれるかと思います。
プロフィール画像やヘッダー画像を何枚も使った華やかな医師ページと、医師の写真すら載っていない、評価の数も少ない、どことなく放置されているような印象の医師ページ…。
この違いは、医師がDocFinderに月々の登録料を支払っているかそうでないかによるものだそうです。
例えば、DocFinderに事実とそぐわない批判コメントを書かれたりした場合、もちろん医師はそれに対する反論、“実際はこうだった、この批判は当たっていない”と書き込みをしたいですよね。
その書き込みをするのに、医師は決して安いとは言えない月々の登録料を支払わなければなりません。
DocFinderを積極的に利用して宣伝したい医師は、登録料を払って見た目の良い医師ページを持ち、患者のコメントに返信もし、結果、患者の投稿数なども多くなってページが華やぎますが、
DocFinderによる宣伝に興味がない、登録料を支払わない医師のページは、患者の投稿数も少ない、写真もない地味なページとなってしまいます。
ですので、患者の投稿や医師からの返信も多く、ページに動きがある=良い医師、
患者の投稿も少なく、医師からの返信はまったくなく、ページが地味=悪い医師、
という訳ではありませんので、ここに書き添えておきます。
また、DocFinderを利用していない医師の情報は古くなっていることもありますね。
DocFinderには“予約は必要なし”と書かれていたのに、実際行ってみると予約必須に変わっていた、などです。
DocFinderを宣伝媒体として積極的に利用している医師とそうでない医師とのページの差が、以前に比べるとより顕著に目立ってきて、ちょっとフェアじゃないな…と感じることも多くなりました。
ですので、“より公平な判断基準で医師を探したい”という場合は、下にも書きましたGoogle検索を利用する方法も参考にしてみてください。
オーストリア医師会(Österreichischen Ärztekammer)のサイト
医師検索サイトとしてもう一つ定番なのは、「オーストリア医師会のサイト」です。
こちらのサイトも以前はよく使っていたのですが、オーストリア医師会のサイトだけあって、医師の口コミ情報などは載ってないんですよね。
今の時代、口コミ情報なしはちょっと…という感じで、最近はあまり使っていないのですが、ただこのサイト、対応可能言語で医師を検索できます。
対応可能言語は医師側の自己申告であって、医師会が確認して載せている訳ではないので、最終的にはやはり電話・メール等で確認した方がいいですね。
私は上でご紹介した「DocFinder」で医師の目星をつけた後、DocFinderに対応可能言語が載っていない場合は、こちらのオーストリア医師会のサイトで確認してみる、というような使い方をしています。
ページ下部の Arztsuche(医師検索)から、お住まいの州を選びクリックしてください。
上図の州選択リストの中から、ウィーンの医師検索サイトだけ直接リンクを貼っておきますね。
なお、ウィーンの医師検索サイトで「日本語対応可」を検索した場合、9情報(医師としては8名。同じ日本人の先生のお名前が2つ載っているので)が検索結果に出てきますが(2019年4月現在)、こちらも医師の自己申告に基づくものですので、個別の確認は必要ですね。
医師検索画面の主なドイツ語
- Postleitzahl: 郵便番号
- Geschlecht: 医師の性別
- Fachgebiet: 専門
- Krankenkassen: 取扱い健康保険
- Ordinationszeiten: 診療曜日と時間帯
- Fremdsprache: 対応可能言語
また、歯科医については、こちらの オーストリア歯科医師会 のサイトから検索できます。
そうなんです、オーストリア医師会のサイトでは、歯科医師は検索できないんですよね。
こちらも医師会のサイトと同様、「住んでいる州を選んで…」と進んでいきますが、とてもわかりやすく作ってあるサイトですので、使い方もすぐにわかるかと思います。
(なお、ウィーンの医師会検索サイトからは、ウィーンの歯科医師会検索サイトに直接飛ぶリンクが貼ってあるんですが(サイト右上の<Landes Zanhärztekammer Wien>と書かれたボタンです)、このリンク、2019年4月現在は壊れていて、歯科医師会の検索サイトにはつながりませんでした。)
ちなみに最初にご紹介した「DocFinder」のサイトでは、医師も歯科医師も、普通に両方検索できるようになっています。
番外編: Google検索を利用する
上記記事の大半は2019年に書いたものですが、現在(2023年)では、まず Google で調べてから、その後で上記「DocFinder」の口コミをのぞく…というやり方をするようになりました。
少し前までは、ローカル情報はローカルのウェブサイトで調べた方が情報量も豊富、内容もより正確で、Googleのローカル情報はいまいち“微妙”な感じがしていたんですが、最近は口コミ数も増え、医師を探す選択肢の一つとして十分機能を果たしてくれます。
近場の医師が地図上にババッと表示されますので視覚的にとてもわかりやすく、医師を探すための最初の一歩として使われると便利かもしれません。
健康保険について
Alle Kassen と Keine Kassen
オーストリア医師会による医師検索サイトの”取扱い健康保険”項目の選択リストに、<Alle Kassen>と<Keine Kassen>があります。
Alle Kassen は「すべての健康保険組合の保険、オーストリアの公的保険に対応ですよ」という意味で、つまり、オーストリアで最も一般的な国民健康保険(GKK Österreichische Gesundheitskasse – ÖGK)にも対応の医師、ということになります。基本的な診察・治療はすべて無料です。
一方 keine Kassen は、「健康保険組合の保険、オーストリアの公的保険には対応していませんよ」という意味で、診療代が全額自己負担となる(もちろん、民間保険会社の保険に加入している場合は、その保険が使えると思いますが)、簡単に言うと、ちょっとお金を出せる人がより良い診療を求めて行く医師(診療所)という感じです。
Keine Kassenの医師(診療所)では、一般的な国民健康保険(GKK Österreichische Gesundheitskasse – ÖGK)は使えません。
例えば、「妊娠の際は、じっくり時間を割いて丁寧に診てくれるお医者さんを選びたい」とか、「国民健康保険の効く専門医を探したが、どこも予約でいっぱいですぐに診てもらえる医師がいない」なんていう場合には、Keine Kassenを選ぶというような方法もありますね。
Wahlarzt & Privat
この Keine Kassen は、最初にご紹介したDocFinderのサイトでは、Wahlarzt(敢えて訳すなら選択医師という感じでしょうか…)または Privat(プライベート)として検索を絞れるようになっています。
Wahlarzt の場合、医師(=診療所)に自費で治療費を支払った後、自分が入っているGKK ÖGK – Österreichische Gesundheitskasseなどの健康保険組合に申請することで、治療費の一部が戻ってくるという制度があります(民間保険会社から支払われる金額については、各保険会社にお尋ねください)。
治療費が自動的に戻ってくる訳ではなく、自分で申請しない限り戻ってきませんので、そこはご注意ください。
治療費還付の申請期限は、診療を受けた日から42ヶ月(3年半)以内となっています。
Wahlarzt の制度としては「同じ診療を保険医(健康保険組合の保険が効く医師)が行った場合の治療費の80%が戻る」となっています。
「実際の治療費の80%」ではなく、「同じ診療を保険医が行った場合の治療費の80%が戻る」というところがポイントですね。
「Wahlarztで100ユーロ支払ったから80ユーロ戻ってくる。」ということではなく、「保険医は同じ診療を50ユーロで行うので、その80%、つまり40ユーロが戻ってくる。」という、そういう世界なので、「ちょっとお小遣いが戻ってきて嬉しいな♪」ぐらいに考えておくとちょうどいい感じです。
Wahlarzt の診療代は、上限や下限が制度で定められている訳ではなく、医師が自分で自由に設定できるようになっています。
平均的な診療代情報を見つけることができなかったのですが、1回の診察につきだいたい150ユーロ前後と覚えておかれると目安になるかと思います。
1回の診察と言っても、保険医で診察を受けるよりじっくりと、こちらが納得のいくまで話を聞いてくれたり、公的保険ではまかなえない治療をしてくれたりしますので、「やることは同じなのに法外な料金を取られた!」のような感覚にはならないかと思います(…そういう感覚になっている人も身内にいるので、ここら辺は何とも言えませんが…)。
なお、公的保険から治療費の還付を受ける場合は、Wahlarztであっても、上の「医師 <一般医と専門医>」内で書きました“四半期(3ヶ月)ルール”が適用されるそうです。
つまり、同じ四半期の間に別の保険医(あるいは、公的組合からの治療費還付の申請を予定しているWahlarzt)を受診した場合、後から受診した医師の治療費が保険の対象とならなくなったりするそうですので、ここはちょっと注意が必要ですね(詳細については、皆さんが加入されている各保険組合にお尋ねください)。
一方、Privat の場合、診療代は全額自己負担になります(民間保険会社から支払われる金額については、各保険会社にお尋ねください)。後から一部戻ってくるということはありません。
ホメオパシーや中国医療などの代替医療は、Privatになることが多いようですね。
また、一人のお医者さんが、ある時間帯は保険医として、別の時間帯にはPrivat医師として仕事をされているということも結構あるようです。
Privat医師として診てもらった時の診療が素晴らしかったので、次は公的保険を効かそうと保険医の時間に訪ねたら、対応が全然違ってショック、のような話もあります。笑 (いや、全然笑えないですが…)
おわりに
医療についてはまだまだ書くべきことがいろいろとありますが、とりあえずこのページでは第一段としまして、
- 基本的なオーストリアの医療システムの概要
- 医師の探し方と、その際に必要となる健康保険の知識
について書いてみました。
今後、それぞれの項目についてもう少し詳しく書いていきたいと思っています。
こういった医療システムについては、オーストリア人に聞いたとしても正確な知識を持っている方は意外と少ないです。私たちが日本でもそうであるように、“だいたいわかっていて、なんとなく使えている”という、そういう感じのものです。
本記事を書くにあたり、正確な情報、最新の情報をわかりやすくお伝えできるよう細心の注意を払いましたが、もし間違いがありましたら申し訳ございません。当サイトの情報を利用されたことによる、問題・損失・損害については、一切の責任を負いかねますことをご了承ください。ご利用は自己責任でお願いいたします。
実用に支障をきたすような大きな間違い、あるいはご経験からのアドバイスがございましたら、お問い合わせフォーム よりご指摘いただけますと嬉しいです。
見知らぬ土地で医療のお世話になるというのは本当に不安なものですが、何かのご参考になれば幸いです。