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2025年5月19日(月曜日)
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オーストリアへ渡航・滞在するー日本人はビザなしで180日滞在OK!に関するあらゆる疑問にお答えします!

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「オーストリアは例外的に、(他のシェンゲン協定加盟国と違い)日本人はビザなしで180日滞在可」というルール。
どこかで聞いたことがあるという方、多いのではないでしょうか。

2024年10月までは、このルールの解釈が流動的で、「6か月の滞在期間(当時は180日ではなく、6か月となっていました)が過ぎたら、またいつオーストリアに戻ってこられるのか」について、様々な意見がありました。

2024年10月、在日オーストリア大使館のウェブサイトで、現状にそくしたルールの解釈が改めて発表され、多少厳格化はされたものの、とてもクリアでわかりやすくなりました。

新解釈が発表されたため、疑問点はほぼ解消されたかと思うのですが、私が長年勤めていた会社で携わっていたリロケーションサポート(オーストリアに来たばかりの日本の方が 現地での生活に溶け込めるよう手続き および 生活全般の手助けをする仕事ですね)の経験などを踏まえて、オーストリアに来られる日本の方が特に知っておくべき、また特に注意すべき“ビザなし滞在可能期間、ビザ、在留許可、パスポートをめぐる事柄”についてわかりやすく説明していきたいと思います。

“日本人はビザなしで180日間滞在可能”とは

オーストリアはシェンゲン協定加盟国ですが、オーストリアと日本が直接結んでいる 二国間協定 での取り決めが優先し、シェンゲン協定で規定されている滞在期間90日を超えて、ビザなしで180日間滞在することが許されている訳です。

♡すめぺん♡

オーストリアー日本間の二国間協定は 1958年 に締結されたもので、約70年という長きにわたって継続されてきました。

29の加盟国からなるシェンゲン協定加盟国の中でも、日本人はビザなしで180日間滞在可 という優遇措置を取っている国はオーストリア一国のみ!

シェンゲン協定 って何?

オーストリアは、シェンゲン協定(Schengen Agreement)に加盟している、いわゆる シェンゲン協定加盟国 です。

シェンゲン協定(Schengen Agreement)というのは、ヨーロッパの国家間で 国境検査なしで国境を超えることを許可する協定 です。

ヨーロッパの計29の国(EU加盟国25か国と、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインの非EU諸国4か国)が加盟しています(2025年4月現在)。


シェンゲン協定加盟国は、短期観光や短期商用などを目的とした短期滞在用の 加盟国共通の査証(シェンゲンビザ)というのを発行しています。

シェンゲンビザ を取得した人は、シェンゲン領域内であれば原則として国境での出入国審査なしに、自由に各国間を行き来することができ、最長180日の間に90日間滞在することが可能、となっています。


ただし、シェンゲンビザの取得を免除されている国 というのがあり、日本もそのうちの一つです。

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日本を含むシェンゲンビザの免除対象国の国民は、渡航目的、パスポート要件、滞在期間、必要書類等の携行等の条件を満たせば、シェンゲン協定加盟国へのビザなしでの滞在が可能で、原則的に出入国審査なしに自由に各国間を移動することができます。

二国間協定<ビザなしで180日間滞在可>が適用されないケースは?

長期滞在予定者は適用外

『なお、オーストリア内務省は、定住の意思を有して無査証でオーストリアに入国した日本国籍所有者には二国間査証免除取極が適用されないため、シェンゲン協定に係るEU規定に基づき、過去180日間のうち最大90日間の滞在しか許可されず、且つ、無査証でオーストリアに入国し、オーストリア国内で在留許可を申請した時点で原則として定住の意思があるとみなされると注意喚起しています。

また、内務省によると、定住の意思があるかどうかは個々のケースにより判断されるため、在留許可を申請した後、在留許可の受取日が入国から90日間を超える場合は事前に居住地区警察に90日を超えて滞在が可能かどうかについて照会することが推奨されています。』

~ 抜粋は以上です ~

つまり、元々、
在留許可(Aufenthaltstitel)を申請&取得する必要がある長期滞在(過去360日間のうち181日以上滞在)を予定してオーストリアに入国した場合。

この場合は、上記の オーストリアー日本間の二国間協定 で規定されている、<日本人はビザなしで180日間滞在できる>という優遇ルールは適用されない、ということですね。

長期滞在を予定してオーストリアに入国した場合は、一般的なシェンゲン協定の規定、つまり<過去180日間のうち最大90日間のシェンゲン領域内の滞在が可能>が適用されるということです。

ですので、
「日本人だから約6ヶ月も余裕がある~、在留許可の申請ものんびりで大丈夫~😊 」ではなく、
「一般的なシェンゲン協定が適用されるから、約3ヶ月以内に在留許可を取得しないと!😲」と理解して、

入国から90日の期間内にできるだけ早く、オーストリアの管轄官庁に在留許可を申請(できれば取得まで)する必要があります。

♡すめぺん♡

シェンゲンビザの免除対象国の国民(日本も含まれます)は、原則として、オーストリアに入国した後、オーストリア国内で在留許可(Aufenthaltstitel)を申請することが許されています

(例外的な在留許可もありますので、詳細は 在日オーストリア大使館 へ問い合わせてみてください)

また、上記 在オーストリア(ウィーン)日本国大使館ウェブサイト をさらに読むと、

無査証でオーストリアに入国し、オーストリア国内で在留許可を申請した時点で原則として定住の意思があるとみなされる

と書いてあります。

在留許可を申請した時点で<定住意志あり>と見なされ、二国間協定 の適用外になるということです。

在留許可を申請してから許可が下りるまで、数ヶ月を要しますよね。あっという間に滞在可能な90日を超えてしまいそうになり焦ります。

その場合は、

定住の意思があるかどうかは個々のケースにより判断されるため、在留許可を申請した後、在留許可の受取日が入国から90日間を超える場合は事前に居住地区警察に90日を超えて滞在が可能かどうかについて照会することが推奨されています。

つまり、在留許可を取得できないまま滞在可能な期間<90日>を超えてしまう心配がある場合は、90日を超えての滞在が可能かどうか、事前に居住地区警察に問い合わせてみるように、となっています。

この<長期滞在予定の人は、オーストリアー日本間の二国間協定の対象外>という記述が認められるのは、今のところ(2025年4月現在)、在オーストリア(ウィーン)日本国大使館ウェブサイト のみです。

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ウェブサイトによると、この記述の情報元は オーストリアの内務省 とのことなので、つまり、オーストリアの 外国人警察(Fremdepolizei)からの情報ということになるかと思います。

何か問題が起きたとしても(問題が起きるとしたら、国境警備や短期滞在を管轄している外国人警察との間でしょう)、それ以前に外国人警察から回答メールをもらっておいて証拠として持っていれば、「私は外国人警察に問題なしと判断されて滞在している」と主張ができるからです。

オーストリアの外国人警察(Fremdepolizei)は丁寧な回答をくださることが多いです。

オーストリアにビザなしで滞在できる期間の詳細は?

過去360日間のうち最大180日間 滞在可能

日本人がビザなしで滞在できる期間について 2024年10月22日 よりルールが厳格化され、過去360日間のうち最大180日間 と制限がつきました。

<2024年10月までの旧規定>
6か月未満の観光、訪問、商用目的での滞在が可能

<2024年10月からの新規定>
過去360日間のうち最大180日間の滞在(観光・知人訪問・出張など)が可能

2024年10月に新規制が発表される前は、<6か月の滞在を過ぎオーストリアから出国した場合、またいつオーストリアに戻れるのか> について、私たち一般人も、また公的機関であっても解釈が一定ではなく、まさにグレーゾーン。

いったんシェンゲン領域から出国してしまえば、滞在日数のカウントがゼロにリセットされ、そこからさらに6か月いられる

という人がいたり、

1カレンダーイヤ-に6か月の滞在が可能なので、1月1日になると滞在日数がゼロにリセットされる

という人がいたり、

オーストリアの管轄機関に尋ねたら、「3か月日本で過ごしたら、また戻って来ていいですよ」と言われた

という人がいたり。

このゆるい感じの運用にかえって助けられた…という方も多くいらっしゃることと思うのですが、この度、2024年10月に <過去360日間のうち最大180日間 滞在できる> と明確に規定されました。

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この スメミヤ のサイト上でも、“どの入国管理官に当たっても問題が起きない、一番安全な解釈”として推奨していたもので、図にしてみると下のような感じになります。

「過去のあらゆる360日の期間内で最大180日間滞在可能」を図にしてみるとこうなる。
<過去360日間のうち最大180日間滞在可能>を図にしてみるとこうなる

1月から6月までオーストリアに滞在した場合、再度オーストリアに滞在できるのは翌年1月から、となります。

“過去360日間のうち最大180日間滞在可能”に関する注意点

最初の90日を過ぎた後、オーストリアから出国すると二国間協定の適用外に

ビザ無しでオーストリアに入国した日本人が90日間以上の滞在を終えオーストリアを出国し、その後オーストリアでのビザ無し最長滞在期間の180日まで「延長する」目的でオーストリアへの再入国ができません。

出国後90日間以上経過した後に再度入国するか、オーストリアに渡航する前にDビザを申請しなければなりません。

ただし、最初の90日間のビザ免除期間中は、シェンゲン協定加盟国およびオーストリアへの複数入国に関する制限はありませんので滞在や旅程を計画する際には、慎重にご検討ください。

つまり、オーストリアに90日を超えて滞在してから出国した場合(この場合、シェンゲン協定で規定されている滞在期間 <あらゆる180日の期間内で最大90日滞在可> も超えていますので、シェンゲン領域外に出国することになりますが)、

「前回の滞在が100日間だったから、あと80日分残ってるわ~😊」などとオーストリアに再入国することはできない、ということですね。

出国後、シェンゲン領域外で90日以上滞在するか、または Dビザ(Visum D)などを取得しなければ、オーストリアに再入国できません。

つまり、90日を過ぎて 一度シェンゲン領域外に出国した場合は、日本人であっても、一般的なシェンゲン協定の規定が適用されると理解しておけばわかりやすいです。

考え方のヒントとしては…

常識で考えても、日本人が利用する可能性のある世界中の空港で、この オーストリアー日本間の二国間協定 の内容が共有されてでもいない限り(実際にはあり得ませんが)、
すでに90日を超えてオーストリアに滞在した日本人が、再度、シェンゲン協定加盟国へ向かうフライトにビザなしで搭乗しようとすれば、
「ビザなし滞在できる期間を超えてますよ」と搭乗拒否されるでしょうね…。

また、シェンゲン協定加盟国の全入国審査官が、二国間協定 について把握してでもいない限り(こちらも実際にはあり得ませんが)、やはり「ビザなしで滞在できる期間を超えてますよ」と入国拒否されてしまうでしょう…。

なので、<日本人はビザなしで180日間滞在できる>の優遇ルールを利用したい方は、90日を超えたらオーストリアから出国しないように注意しましょう。

滞在が180日以下であってもビザが必要な場合

Dビザ(Visum D)の取得が必要なケース

滞在が180日以下であっても、就労を目的とする滞在、あるいは 該当機関で研究員・客員研究員・インターン・研究生などとして滞在する場合は、最長6ヶ月の滞在が可能な短期滞在者用のビザ《Dビザ(Visum D)》を取得する必要があります。

Dビザ(Visum D)はオーストリアへの渡航前に(← オーストリア国内での申請はできません!)、オーストリアの在外公館(大使館)、あるいはオーストリア大使館と提携しているビザ手配代行サービス会社を通して申請します。

東京の駐日オーストリア大使館に加え、大阪・名古屋(名古屋は申請できなくなりました)でも申請が可能です。
大坂・名古屋での申請は、VFSサービシズ・ジャパン さんという、オーストリア大使館と提携しているビザ手配代行サービス会社(追加のサービス料金がかかります)で行われるそうです。

また、VFSサービシズ・ジャパン さんの東京センターでも申請ができるようになったそうです(2022年2月 / こちらも追加のサービス料金がかかります)。

なお、Dビザは延長ができませんので、滞在が180日を過ぎる場合は、オーストリアに渡航後 速やかに「在留許可 Aufenthaltstitel」を申請する必要があります。

180日以下の滞在で、語学学校に通う場合

ドイツ語の語学学校に通うため、最長180日間 オーストリアに滞在したいという方も多いかと思います。

Dビザの取得が必要になるのは、オーストリアで報酬を得る活動をする場合、あるいは オーストリアの外国人雇用法上、許可制であったり、申告義務が必要となる特定活動を行う場合となっています。

語学留学や、あるいは短期間だけ ある教授の下でプライベートレッスンを受けたい、などの目的で渡航される場合、外国人雇用法上の適用にはなり得ませんので、通常は Dビザを申請する必要なし ということになります。

ただもちろん、滞在が180日を過ぎるとわかっている場合、

この場合は、オーストリアー日本間の二国間協定は適用されませんので(2024年10月より)、オーストリアに渡航後 速やかに「在留許可 Aufenthaltstitel」を申請する必要があります。

ただ、語学留学やプライベートレッスンという留学目的では、在留許可の取得は大変難しいというのが現状です。

ビザ(Visum)と在留許可(Aufenthaltstitel)の違い

ここで、ビザ(Visum)と在留許可(Aufenthaltstitel)の違いについて、簡単にまとめておきます。

ビザ“査証”と書いたりもしますが、○○大使館が発行する いわゆる推薦状。当該○○国へ入国する際に必要となる書類です。

大使館の審査の結果、「この日本人が○○国に入国するのに支障はないと判断された」ということを、入国審査官に示すための推薦状 あるいは 紹介状といった扱いになります。

一方、在留許可は、外国人が当該○○国に合法的に滞在するための許可・資格です。

オーストリアの場合、駐在社員用、学生用など、滞在目的によって異なる種類の在留許可が発給され、通常1年を期限としています。
滞在が1年より長くなる場合は、適切な時期に在留許可の延長申請を行う必要があります。

日本国籍の方は、原則 オーストリアに渡航後、オーストリア国内の居住地担当のお役所で 在留許可 の申請をします。

テレビや新聞などでも、この「ビザ(査証)」と「在留許可」をひとまとめにして「ビザ」と呼ぶことが少なくないため、いざ自分が当事者となり申請手続きをするとなった場合、混乱してしまいますが、ビザ(査証)=入国用在留許可=滞在用 と覚えておくと 混乱が防げますね。

ただ、オーストリアの Dビザ は、“滞在が91日から6ヶ月まで”の人に発行されますので、“入国用”というには若干無理がありますよね。
そんなところもビザと在留許可の混同を招く一因かと思いますが、Dビザは入国用・短期滞在用、在留許可は長期滞在用 と考えておくとよいかと思います。

滞在が180日を超える場合

滞在が180日を超える場合、ビザなしで滞在可能な期間内に、オーストリア政府が発行する 在留許可 を取得する必要があります。

入国当初からオーストリアでの滞在が180日を超えることがわかっている場合、つまり、オーストリアでの長期滞在を予定して入国した場合は、オーストリアー日本間の二国間協定は適用されない ということなので(2024年10月より)、入国後、すみやかに在留許可を申請します。

日本国籍の方は、原則 オーストリアに渡航後、オーストリア国内の居住地担当のお役所で 在留許可 の申請をします。

在留許可<Aufenthaltstitel>は、

  • 滞在許可<Aufenthaltsbewilligung>
  • 定住許可<Niederlassungsbewilligung>

の二大許可証に大別され、各在留許可の下、滞在目的別に さらに合計22種もの許可証に分類されています。

皆さんが申請すべき在留許可はどれなのか、あるいは そもそも申請できそうな在留許可があるのかどうか、下の関連記事2つが参考になるかと思いますので、どうぞご一読ください。

オーストリアであなたが申請する在留許可はどれ? ① – 滞在許可全11種 について説明します
オーストリアであなたが申請する在留許可はどれ? ① – 滞在許可全11種 について説明します
日本国籍保有者は、観光・知人訪問・出張(商談)など、就労以外の目的でオーストリアを訪れ、その滞在が6ヶ月を超え…
https://sumemiya.net/aufenthaltstitel-in-austria-1/
オーストリアであなたが申請する在留許可はどれ? ② – 定住許可全6種 と その他の在留許可全5種 について説明します
オーストリアであなたが申請する在留許可はどれ? ② – 定住許可全6種 と その他の在留許可全5種 について説明します
前回の記事<オーストリアであなたが申請する在留許可はどれ? ① – 滞在許可全11種 について説明します> に…
https://sumemiya.net/aufenthaltstitel-in-austria-2/

オーストリアでの滞在が90日を過ぎた場合に注意すること

90日を超えてオーストリア(つまり、シェンゲン領域)から出国した場合、オーストリアー日本間の二国間協定は適用されなくなり、
シェンゲン領域外で90日以上滞在するか、または Dビザ(Visum D)などを取得しなければオーストリアに再入国できない、という話は上に書きました。

この項目は、それ以外で注意することについて です。


オーストリアへ渡航後90日が過ぎた場合も、上記の通り二国間協定があるため、オーストリア国内に滞在する限り問題はありません。

注意が必要なのは、オーストリアから「ちょっと旅行でも…」と軽い気持ちでオーストリア国外のシェンゲン協定加盟国(東西南北、すべて加盟国だらけです)に出てしまう場合、あるいは、どこかのシェンゲン協定国経由で日本に帰国する、というような場合です。

国境でのパスポートコントロールはなくなってきているので(ドイツ国境など、移民問題や口蹄疫発生の影響などで抜き打ち方式で復活している所もあります<2025年追記>)出国してもバレないんじゃ…と言われればそうですが、警備や捜査など、何らかの理由でコントロールされた場合、不法滞在として処罰・国外退去処分の対象となってしまいますので、十分に注意が必要です。

また、「乗り継ぎだけだから…」と、シェンゲン協定国の空港に立ち寄るのも危険です。

オーストリアで90日以上を過ごし、フィンランドのヘルシンキ空港経由で日本へ帰国しようとしていた人が、ヘルシンキ空港の出国審査で引っ掛かり、空港内の拘置所に一時留め置かれたなどという話も耳にします。

そこで、「オーストリアでは180日滞在可だったのでうっかり…」などと説明してみても、フィンランドの出国審査官にとっては「は?なんのこと??この日本人は、90日を越えてシェンゲン領域内に滞在した不法滞在者でしょ?」となってしまいます。

90日を超えてから日本に帰国する場合は、乗り継ぎ予定のシェンゲン協定加盟国のビザ(上の例ならフィンランド共和国発行のビザ)を取得するか(これは一番手間がかかりますが)、日本への直行便を使う、あるいはイギリス経由便などでも大丈夫です。イギリスはシェンゲン協定に加盟していないからです。

また、シェンゲン協定とはまったく関係ない、トルコやカタール、アジア諸国経由での帰国も、もちろん問題ありません。

《Dビザ(Visum D)》を取得できた人も、オーストリア国内には6ヶ月間滞在できますが、オーストリア以外のシェンゲン協定国に移動できるのは、過去180日間のうち90日間までです。

つまり、オーストリアへ渡航後90日を過ぎると、「ちょっとお隣りの国(シェンゲン協定国)に旅行へ…」というのは違法になってしまいますので注意しましょう。

オーストリア以外のシェンゲン域内で90日を過ごし、その後オーストリアへ。そこからさらに+90日の滞在(オーストリア国内に限る)は可能なのか?

「オーストリア以外のシェンゲン領域内で過ごし、ビザなし滞在が可能な90日を越えそうになったらオーストリアへ移動。オーストリアと日本の二国間協定のため、そこからさらに90日滞在できるはず(オーストリア国内に限りますが)。そうすれば、日本へ帰国する必要もなく、できるだけ長くヨーロッパに滞在できる」という考え方が、一時ずいぶん広がっていたようです。

「それはちょっと、オーストリアー日本間の二国間協定の趣旨とは違うんじゃ…」と感じながらも、あからさまに法律に違反しているという訳でもなく…。

以前は私たち一般も、また大使館などの公的機関であっても、「そういう方法も、まぁありといえばあり」と解釈し、運用されていた部分がありました。

ただ、2024年10月に駐日オーストリア大使館が公表した内容から、上記のような考え方は、やはり二国間協定の運用指針に反しているというのが察せられます。

二国間査証免除取極による上述目的の180日間のオーストリア滞在は、入国後の最初の90日間が経過した後に(出入国することなく)引き続き最長90日間オーストリアに滞在する場合のみ可能。

入国後の最初の90日間のビザ免除滞在中は、シェンゲン協定加盟国およびオーストリアへの複数入国に関する制限はありません。新しい規定を踏まえ、滞在期間や旅程を計画する際、慎重にご検討ください。

オーストリアー日本間の二国間協定は、あくまで(主に)オーストリアに90日間滞在した後に、引き続き最長90日間オーストリアに滞在する場合のみ可能 と明記されています。

考え方のヒントとしては…

二国間協定が締結されたのは、なにせ約70年も前のこと。

EUができて国境を自由に行き来できるようになり、バックパッカーや海外ノマドワーカーも当たり前になって、海外に出国する日本人の数も数百倍に…という状況など、まったく想定されなかった頃に締結された協定です。

そんな激動の中でも継続されてきた貴重な 二国間協定 なので、あまり無謀な解釈はせずに、“常識の範囲内で”利用するよう心がけるとよいでしょう。

また、2024年10月に上記の厳格化された規定が発表される前は、二国間協定 の適用を受けたい場合、シェンゲン領域内への入国審査をオーストリアで受ける必要がある、と在オーストリア日本国大使館のウェブサイトに記載されていました(2025年4月現在、そのページはなくなっていますが)。

つまり、シェンゲン領域内への入国スタンプ(入国スタンプは、シェンゲン領域内に入る最初の国でのみ押印されます)を、オーストリアの空港で押してもらっている必要がある、ということです。

(2024年10月以前の 在オーストリア日本国大使館のウェブサイト より)

なお、日本とオーストリアの査証免除取極はオーストリアでのみ有効な取極であるため、90日間を超えて滞在する目的をもって無査証でオーストリアに渡航する場合は,オーストリアで入国審査を受けるため、シェンゲン域内の国を経由せずにオーストリアに乗り入れている航空便を利用してください。また、無査証で90日間を超えて滞在した後にオーストリアから出国する場合も、オーストリアにおいて出国審査を受けるため、シェンゲン域内国を経由しない航空便を利用してください。

(※太字はこちらで追加しました。原文は太字ではありません)

本来の取り決めと、実際運用されている現場とでは やはりズレもありましたが(公的機関に尋ねても、「入国がオーストリアじゃなくても大丈夫。帰国の時だけ、シェンゲン領域内の空港を経由しないように気を付けて」と言われた、など)、

厳格化した今の規定を踏まえても、オーストリアで入国審査を受ける、つまり、シェンゲン領域内の国を経由せずにオーストリアに直接乗り入れているフライトを利用するのは、もっとも安全な方法かと思います。

(入国後 最初の90日は、シェンゲン領域内の複数の国々を頻繁に旅行していたとしても)私の主な渡航目的はオーストリアなんだ!オーストリアでの滞在期間がもっとも長いんだ!というのをアピールできますので、より安心して二国間協定を利用できるかと思います。

日本以外の国からシェンゲン領域内に入るフライトを利用する場合

日本以外の国からシェンゲン領域内に乗り入れているフライトを利用する場合、特に注意が必要です。

最終的にはオーストリアに移動するから…と、6か月近く先の帰国便チケットを持ってチェックインしようとすると、「シェンゲン領域内に滞在できるのは90日ですよ。ビザなしでは滞在できません」と詰め寄られる可能性があります。日本以外の空港で、<日本人はビザなしでオーストリアに180日滞在可>の独自協定を知っている職員はまずいないでしょう。

押し問答の末、帰国便のチケットを、実際に予約していた6か月先の日程のものから、90日以内の日程のものへと変更させられた、というようなケースもあるそうです。

詰め寄られた場合の対応を考えておくのと同時に、この場合(=日本国外からシェンゲン領域内に入る場合)は必ず、オーストリアへ直接入るフライトを利用するのが安全です。

♡すめぺん♡

日本の空港であっても、オーストリアに直接乗り入れているオーストリア航空のチェックインデスクでもない限り、二国間協定 について知っている職員さんはまずいないと思います。

この意味でもやはり、オーストリア航空を利用するのが一番安心ですね。

“出入国手続きをする国”の意味

私の場合がそうなのですが、オーストリア在住にもかかわらず、日本帰国に際して飛行機を利用する際、出入国手続きをするのはドイツであったり、フィンランドであったりで、私の在住国・オーストリアではないことがあります。

その理由は、私がいつも日本とオーストリアの直行便を利用するとは限らず(コロナの影響などで、直行便が飛んでいない時期がありました)、ドイツのフランクフルト経由、あるいはフィンランドのヘルシンキ経由のフライトも利用するから。

シェンゲン協定(ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)”に加盟している国家間を移動する場合は、まさに“国境検査なしで国境を超えることを許可する協定”と明記されていますように、国境検査 つまり 出入国審査がありません。

出入国審査が必要になるのは、シェンゲン協定加盟国外からシェンゲン領域内に入る場合、そしてシェンゲン領域外に出る場合です。

つまり、私の一時帰国の例でいうと、

オーストリア



<!乗り継ぎ!> ドイツ(シェンゲン領域から出るため、ここ ドイツ で出国審査



日本

または、

日本



<!乗り継ぎ!> ドイツ(シェンゲン領域に入るため、ここ ドイツ で入国審査



オーストリア

ということになり、オーストリアでは何の審査もありません。

というところで もう1点、注意すべき大事な事柄があります。

ここ何年かの間に、ちょくちょく聞くようになってきたのですが、最終的にオーストリアに渡航するため、オーストリアではない、他のシェンゲン協定加盟国の空港で入国審査を受けたところ、ビザあるいは在留許可不所持という理由で 入国を拒否される という問題です。

ドイツ以外のシェンゲン協定域内国に長期滞在を目的として渡航した邦人が、経由地であるドイツで入国審査を受ける際に、ドイツで入国管理当局から(1)最終滞在予定国の有効な滞在許可証、又は(2)ドイツ滞在法第4条のカテゴリーD査証(ナショナル・ビザ)(注)、又は同査証に相当する滞在予定国の長期滞在査証の提示を求められ、これを所持していないために入国を拒否される事例が発生しております。

このため、現地に到着してから滞在許可証を取得することを予定している場合には、注意が必要です。

ドイツ以外の国では同様の事例は発生しておりませんが、シェンゲン協定域内国での長期滞在を目的に渡航する場合には、滞在国及び経由国の入国審査、滞在許可制度の詳細につき、各国の政府観光局、我が国に存在する各国の大使館等に問い合わせるなどし、事前に確認するようにしてください。

また、在オーストリア日本大使館のサイトには、さらっとですが、以下のように書かれています。

(注)シェンゲン領域においては、シェンゲン領域に最初に入った国(経由地を含む)でシェンゲン領域への入国審査が実施され、最後に出国する国(経由地を含む)でシェンゲン領域内からの出国審査が行われます。

このためオーストリアにおいて出入国審査を受けるためにはシェンゲン領域の国を経由せずにオーストリアに乗り入れている航空便を利用する必要があります。

なお〃シェンゲン域内を経由する場合には〃シェンゲン・ビザを取得するよう在日オーストリア大使館では案内しておりますのでご留意ください

(※太字はこちらで追加しました。原文は太字ではありません)

そしてこちら↓が、上記太字が述べるところの大元、在日オーストリア大使館サイトの記述です。

オーストリアに3ヶ月以上(180日未満)滞在する日本国旅券所持者は直行便でオーストリアに出入国しない場合、非シェンゲン加盟国経由で出入国するか、シェンゲンビザを取得しなければなりません。

という訳ですので、オーストリアでの長期滞在を目的とし(つまり、帰国便チケットの日程が90日を超えているような場合)、オーストリアに到着してから在留許可の申請を予定している方は注意が必要ですね。

事前に、経由される国の駐日大使館に問い合わせ、確認されることをお勧めします。

ちなみに、ヨーロッパの多くの国が加盟しているシェンゲン協定ですが、イギリスを始め、アイルランド、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、キプロスといった、実はシェンゲン協定に加盟していない国というのが、ちらほらあります。

EUには加盟しているのに(イギリスは まもなく離脱するのかもしれませんが…2019年11月記 離脱しましたが…)、シェンゲン協定には加盟していないという、ちょっとややこしい国々ですね。

ヨーロッパのシェンゲン協定加盟国と、これら非加盟国間の移動には、やはり普通に出入国手続きがありますので、ここはご注意ください。
…と言っても、普通に出入国審査があるだけですが。

パスポートの確認も忘れずに。オーストリアでパスポートをすられた場合は要注意!

パスポートの有効期限

海外に渡航する場合の最重要アイテム = パスポートに関するルールは簡単です。

シェンゲン協定の規定と同じく、

有効期間が出国予定日(=予定滞在期間終了日)から3か月以上残っており、かつ、10年以内に発行されたパスポート

となっています。

つまり、オーストリアに最長180日滞在する予定で入国する方は、180日+3ヶ月で 少なくとも9か月は有効なパスポートを所持している必要がある、ということですね。

パスポートをすられた場合は要注意!

オーストリアでパスポートをすられた場合の注意事項です。

オーストリアでパスポートをすられ、日本大使館で幸いにも翌日発行、無事 新品のパスポートを手にしてオーストリアから出国した、という場合。
残念ながら、結構ありがちなケースですよね。

その場合、空港の出国審査で、「なぜ パスポートに何のスタンプも押されていないのか。なぜ東京までの片道チケットしか持っていないのか。」と詰め寄られることがあります。

パスポートをすられ、大使館で新しく発行してもらったためだと説明し、警察で作成してもらった盗難届を見せたとしても、「片道チケットではダメだ。来た時の搭乗券を見せなさい!」と、さらに厳しく詰問されたりもします。

私の知り合いの方は、とにかく所持品のすべてを盗まれてしまっていたので(それについては、ちゃんと盗難届にも記載されていましたが)、紙媒体の航空券も搭乗券も所持されていませんでした。

その方はたまたま、“メールに搭乗券の記録があったはず”と思い出されて、「ちょっと待って」とスマホのメールを大急ぎでチェックされていたところ、後ろの列がすごいことになっていたようで、「もういいや」という感じで出国スタンプを押してくれたそうです。

“あまり厳しくない”と言われるオーストリアの出国審査でもこうですから、これが審査の厳しさで知られるドイツやフィンランドの空港で起きていたとしたら、「もういいや」では済まなかったかもしれません。

旅行中にパスポートをすられるケースは残念ながら意外と多いと思いますが、現地で発行された新品のパスポートで帰国される場合は、警察で作成してもらう盗難届行きの搭乗券の記録を忘れずに準備して出国審査に臨まれてください。

なぜ“行きの搭乗券”が必要なの?

出国審査

なぜ執拗に“行きの搭乗券を見せて”と言われるかというと、オーストリア(あるいは、その他のシェンゲン領域)に長期間、不正で滞在し、帰国する時に“パスポートをなくした”と大使館でパスポートを申請、空港の出国審査では、真新しい、自分が入国した日の記録がないパスポートでごまかしつつ、まんまと出国してしまう…という不正が、結構 横行していたんですよね…。

テロ問題・移民問題が大きな社会問題になり出す前は、この方法でも意外とスルーされていたかと思うのですが、現在はチェックが厳しくなっていますので、どうぞご注意ください。

おわりに

オーストリアには、原則 ビザなしで180日間も滞在できる ということで、ずいぶん優遇されていますが、

** まとめ **

  • 長期滞在予定者、または、オーストリアで在留許可の申請をした人は、二国間協定(180日間滞在可)の適用外となる
  • 180日間までの短期滞在に関して複雑な質問がある場合は、オーストリアの外国人警察(Fremdepolizei)に問い合わせるのがもっとも確実
  • 2024年10月より、<過去360日間のうち最大180日間滞在可能>とルールが厳格化された
  • 最初の90日を過ぎた後、オーストリア(つまりシェンゲン領域)から出国すると二国間協定の適用外となる
  • 180日以下であっても就労を目的とする滞在など、Dビザが必要な場合も
  • 90日の滞在期間が過ぎたら、オーストリア以外のシェンゲン協定国への入国は違法に
  • そのため、90日を過ぎたら、シェンゲン協定国経由の帰国便は使わない
  • Dビザを取得していても、6ヶ月滞在可なのはオーストリア国内のみ。90日を過ぎてからのシェンゲン協定国への入国は違法に
  • オーストリアに6ヶ月滞在後の再入国については、何ヶ月経過すれば違法とならないか、特に協定で決められている訳ではないが、速やかに在留許可を申請するのがベスト。あるいは“6ヶ月経過後に再入国可能”と考えておけば最も安全(→2024年10月より、上記の通りルールが明確になりました)
  • 二国間協定による180日間のオーストリア滞在は、入国後の最初の90日間が経過した後、(出入国することなく)引き続き最長90日間オーストリアに滞在する場合のみ可能。
    ただし、最初の90日間滞在中は、シェンゲン協定加盟国およびオーストリアへの複数入国に関する制限なし
  • 二国間協定を利用する場合、シェンゲン領域内への入国審査をオーストリアで受けておくのがベスト

など、頭に入れておきたい注意事項ですね。

オーストリア、シェンゲン協定加盟国内を堂々と闊歩できますように、滞在に危ういところがないか常に気を配っていきましょう 😊

なお、滞在に関するルールの解釈は流動的で、対応も一律ではありません。当サイトの情報を利用されたことによる、問題・損失・損害については、一切の責任を負いかねますことをご了承ください。ご利用は自己責任でお願いいたします。

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♡すめぺん♡
♡すめぺん♡
~2009年よりウィーン在住~

文化人類学を専門に学び、オーストリアの暮らしや文化に長く親しんできた人。
ウィーンで子育てをしながら、ブログでは現地の生活情報や、ちょっとした気づきを発信中🌿

大学研究室、芸術文化系の職場やメーカー勤務を経て、
勤務先などを通じてリロケーションサポート(生活立ち上げ支援)にも10年以上携わってきました。
(※現在、滞在に関する個別のご相談はお受けしておりませんのでご了承ください。)

ネコ、写真、宗教音楽、宇宙などが好き。
なんでもスローテンポな人間なので、家族には「前世はナマケモノ🦥」と笑われていますが、
「ナマケモノでもまぁいっか」と、最近ようやく思えるようになってきました😊
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