イースターはここ最近、日本でも楽しまれるイベントになってきましたね。
日本語では「復活祭」とも訳され、もともとはイエス・キリストの復活を祝うキリスト教の大切なお祭りです。
十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日後に復活し、預言通り弟子たちの前に姿を現したという、聖書の中でもっとも大切とされる奇跡を記念・記憶する祭事となっています。
ちょっと昔の話にさかのぼると(というか、大昔ですが)、英語のイースター (Easter)・ドイツ語のオースタン (Ostern) の呼び名は共に、ゲルマン神話の春の女神 “エオストレ (Eostre)・オースタラ (Ostara)”を語源にしていると言われているのだそうです。
イエス・キリストの復活と、古代からの民間信仰に基づく春祭りが融合して、キリスト教のイースターとなっていったんですね。
イースターと言えばまず、色とりどりに彩色された美しい卵のデコレーション「イースターエッグ」と、モフモフとかわいらしい「イースターバニー(ウサギ)」が思い浮かびますが、こんなかわいらしいイースターのシンボルも、春祭りの名残りです。
卵は命のはじまりの象徴であり、またうさぎは多産であることから、豊穣や繁栄のシンボルとされています。
ここウィーンでもイースターの時期が近づくと、街中どこを歩いても卵とウサギ。右を向ていも左を向いても卵とウサギ。笑
ケーキ屋さんやスーパーには、卵やウサギの形をしたチョコレートやマジパンがずらりと並び、かわいらしく彩色された卵で飾られたネコヤナギやレンギョウの枝がショーウィンドーを彩ります。
ウサギの他にも、ニワトリ、ヒヨコ、ヒツジも頻繁に登場し、パステルカラーに彩られた、それはそれはメルヘンチックな世界です。あまりのかわいらしさにテンションが上がります。どれもこれも欲しくなります。笑
さて、ここでようやく本題ですが(前置きが長くなりましたが)、このイースターの時期、正確にはイースターの2週間ほど前辺りからですが、ウィーンの各所でイースター市(ドイツ語では“Ostermarkt(オースターマルクト)”と言います)が開催されます。
やはり卵とウサギにあふれた(これは外せません 笑)、陽光の下で春の訪れを喜び合う、かわいらしくも華やかな市ですので、もしこの春の時期にウィーンを訪れる機会のある方は、どうぞ一度足を運ばれてみてください!
なお、イースターは毎年日にちが変わる移動祝日です。
「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」 と決まっていまして(なんだか謎の暗号のようで覚えにくいですが…)、3月22日から4月25日の間のいずれかの日曜日に当たります。
その年のイースターに合わせ、イースター市の開催時期も前後しますので、ぜひイースター市に行ってみたい!という方は、その年の開催時期に注意してくださいね。
当記事にもリンクを貼りましたので、事前に開催時期をご確認ください。
🐰 2023年のイースターは、2023年4月9日(日)です。🐰 2022年のイースターは、2022年4月17日(日)です。🐰 2021年のイースターは、2021年4月4日(日)です。🐰 2020年のイースターは、2020年4月12日(日)です。
シェーンブルン宮殿のイースター市
🐰 Ostermarkt Schloss Schönbrunn
2023年3月25日(土)~4月11日(火)
毎日10:00~18:30 (入場無料)
www.ostermarkt.co.at
シェーンブルン宮殿のイースター市は、2023年で開催21年目を迎えるそうです。
シェーンブルン宮殿の正門を入ってすぐ、宮殿の前庭で開催されます。12月にクリスマス市が開催されるのと同じ場所ですね。
かわいらしいイースターグッズや軽食を売るスタンドが70以上もずらりと並び、訪れた人の目を楽しませてくれます。
これは本当にかわいすぎてテンション上がります!
ネコヤナギを飾りつけるのにちょうどいい、イースターモチーフの木彫りのオーナメントなんか、本気で全部欲しくなりましたね。全部で100種類ぐらいありましたが(もっとかも)。笑
3個買って諦めましたが、これで一つ3.5ユーロ(約430円)*、買いやすいお値段じゃないかなと思います。^^
(*2019年の値段です。)
公式ページ には70にも上る各スタンドの写真が掲載されていますが、かわいらしい飾りや雑貨があふれていて、写真を見るだけでも心が躍ります。
地元の名産品や、お土産に良さそうなイースターグッズもあふれていますので、お土産をここで探すというのも楽しいです。
ただ、イースターのシンボルである彩色した卵(本物の卵の場合ですが)だけは、本当に壊れやすいですので、持ち帰りには注意が必要です。
うちの子供が幼稚園で作ってきたイースターエッグも、家に持ち帰るほんの10分の間に割れてしまいました…。
何せ生まれる前のヒヨコが自力で割れるぐらいですからね、やはり壊れやすいです。
卵を買う場合は、プラスチック製のタッパー(もちろん卵の幅より大きいもの/少し大き目なスーパーなどでも売っています)なんかにティッシュなどでクッションを作って持ち帰られると安心ですね。
お店屋さんの方で持ち運び用の卵パックに入れてくれることも多いです。
また、子供のためのイベントやワークショップ(ネコヤナギを使ってイースターの飾りを作ったり、マジパンでお人形を作ったり…)、日にち・時間は限られていますがライブミュージックの演奏などもあります。開催日時はウェブサイトに詳しく載っています。
前庭に備え付けのベンチに加え、ちょっと休憩できるイスやテーブルも用意されていますので(こちらもかわいい卵仕様)、お年寄りやお子さん連れにも優しいですね。
下の項目でご紹介するイースター市にも出かけましたが、私は個人的にはこのシェーンブルン宮殿のイースター市が一番気に入りました。
スタンドの楽しさもさることながら、なにせ広々としていて動きやすい。
小さいお子さん連れだと、子供が疲れてしまって座りたがったり、また親の方も前に後ろに大きな荷物を抱えていますので、場所が広いというのはありがたいです。
そして何より、イースター市の後ろに建つ、シェーンブルン・イエローと呼ばれる柔らかな黄色の壁面を持つ華麗な宮殿が、イースター市に華やかさを添えてくれます。
= 基本情報 =
Schönbrunner Schlossstraße, 1130 Wien
www.ostermarkt.co.at
= アクセス =
– 地下鉄U4<Schoenbrunn駅>から徒歩5分。
– トラム10、60、バス10AはSchoenbrunn宮殿の正門近くに停まります。
フライウング広場の伝統イースター市
🐰 Altwiener Ostermarkt
2023年3月24日(金)~4月10日(月)
毎日10:00~20:00 (入場無料)
www.altwiener-markt.at
ウィーンの旧市街(1区)では2つのイースター市が開催されますが、こちらはその内の1つ、フライウング広場(Freyung)に立つイースター市です。
フライウング広場のイースター市と、次の項目でご紹介するアム・ホーフ広場のイースター市は、お互い隣り合うような近さで並んでいます(建物を2つ挟みますので、お互いが見えるほどお隣りではないですが)。
ウィーンの旧市街は道が入り組んでいて、慣れてきても「えっ!?何っ!??こんな所に出てきちゃったよ!」となったりするのですが(私だけかもしれませんが)、このフライウング広場、私にとってはなんだか未だに方向感覚が狂う場所です。笑
旧市街の西方に位置するウィーン大学などからも遠くないので、「あぁ、旧市街の中心からはずいぶん離れたなぁ」なんて思っていると、意外や意外、旧市街の中心・シュテファン大聖堂から西方に伸びるグラーベン通りと思いの外近いんですよね。
シュテファン大聖堂からは歩いて10分ほど、美しい旧市街の街並みを眺めながら進んで行くと、思いの外すぐにフライウング広場にたどり着きます(あくまで大人の足で…ですが)。
こちらのイースター市はそれほど大きいものではないのですが、とにかく驚かされるのは、そこで売られている卵の数!
息をのむほど美しく装飾された卵が文字通り山のように積まれ、所狭しと並んでいます。
その数は4万個にも上るそうで、ヨーロッパ最大のイースター・エッグの山なのだそうです。
美しく繊細な装飾を施された卵はあまりに美しくて、本当に吸い込まれそうな感覚になりますね。あの、すぐに割れてしまう卵に、どうしたらこんな繊細な装飾を施せるのか…。
街中で買えるイースター・エッグにはプラスチックや発泡スチロールなど様々な素材がありますが、こちらの卵はほとんどすべてが殻の中身をくり抜いて作った本物の卵です。
本物の卵で作ったイースター・エッグは、素朴さと暖かみが加わって、プラスチックでは出せない美しさがありますね。
ちなみにお値段ですが、私が気に入った卵は1つ8ユーロ。5ユーロぐらいからあるようです。
卵はパルプの卵ケース(こちらのスーパーで売られている卵が入ってるケースと同じものですね)に入れて売ってくれますので、普通に持って帰る分には、途中で壊れてしまうなどのこともないかと思います。
保存する時だけ、缶やプラスチック製の、押してもつぶれない容器に入れるといいですね。
小さな場所に所狭しとスタンドが並び、さらにその横には繊細な卵の山…ということで、ベビーカーで行くのはちょっと躊躇してしまいますが(混雑している時間は、ベビーカーじゃなくても動きにくいほどです)、午前中、市が開いてすぐなど、比較的空いている時間を選ぶといいかなと思います。
小さなお子さんも同様に、卵に手を出したりしてしまわないように気を遣いますが、子供お断りという訳ではまったくなく、市にはイースター休暇中の子供さんもたくさん訪れます。
マーケットの一角には人形劇やコンサート用のステージが設置され、ライブミュージックの他に、子供用のイベント・ワークショップも用意されていますので、興味のある方はウェブサイトで開催日時をチェックしてみてくださいね!
2019年 2023年だと人形劇は 月曜~金曜の10:00~ となっていますので、やはり午前中は、お子さん連れにはねらい目ですね!
= 基本情報 =
Freyung, 1010 Wien
www.altwiener-markt.at
= アクセス =
– 地下鉄U3<Herrengasse駅>から徒歩4分
– 地下鉄U2、トラム 1/71/D/37/38/40/41/42/43/44<Schottentor駅>から徒歩5分
– 地下鉄U1・U3<Stephansplatz駅>から徒歩10分 – シュテファン大聖堂のある駅です
アム・ホーフ広場のイースター市
🐰 Ostermarkt Am Hof
2023年3月24日(金)~4月10日(月)
月~木: 11:00~20:00
金・土・祝日: 10:00~20:00
※飲食系のスタンドは21時まで営業
www.ostermarkt-hof.at
ウィーン旧市街で開催されるもう一つの市が、こちらのアム・ホーム広場のイースター市。
前の項目でご紹介したフライウング広場からは建物2つを挟んで、すぐ隣りの広場になります。お互い30秒ほどで移動できるような距離なので、両方セットで行ってしまいたいイースター市です。
所用があり、こちらのアム・ホーフ広場のイースター市はじっくり見ることができなかったのですが、上2つのイースター市とは趣の異なる市でしたね。
工芸品や装飾品の作家さん方が出店されているので、イースターとはあまり関係のない、かといってそこら辺のお店ではあまり売られていないような、独創的な装飾品や木のからくりおもちゃなど、美術館でじっくり眺めたいような品々が並んでいました。
おしゃれな老婦人が売り物の女優帽を楽しそうに試着していましたが、本当に往年のハリウッド女優のようで素敵でしたね~♡ 私がかぶったら間違いなくピエロですが。笑
あとは、ワインや軽食のスタンドも数多く並んでいて、地元名産のチーズやハムのような、日本ではお目にかかれない“屋台メシ”もおいしそう!
ちょっと大人な、おしゃれな雰囲気なので、いわゆる“屋台メシ”とはイメージが違いすぎますが…。
テーブルも設置されていますので(立って食べる形ですが)、暖かい日でしたらここで簡単な食事を取ってしまうのもいいですね。
子供向きというよりは大人向き、卵とウサギであふれたメルヘンチックなイースター市とは趣の異なる、落ち着いた雰囲気の市でした。
= 基本情報 =
Am Hof, 1010 Wien
www.ostermarkt-hof.at
= アクセス =
– 地下鉄U3<Herrengasse駅>から徒歩5分
– 地下鉄U2、トラム 1/71/D/37/38/40/41/42/43/44<Schottentor駅>から徒歩6分
– 地下鉄U1・U3<Stephansplatz駅>から徒歩8分 – シュテファン大聖堂のある駅です
その他のイースター市
上にご紹介した3つのイースター市が、ウィーンの三大イースター市とも言える、規模の大きな市です。場所柄、観光客も多く訪れる市ですね。
この時期、ウィーンでは上記3つ以外にもいくつかのイースター市が開催されています。
観光の場合、敢えてここまで訪ねなくてもいいかな…という規模ですが、たまたま泊まられている所に近いなんていう場合には、ふらっと立ち寄ってみるのも楽しいかもしれません。
私自身、まだ訪ねたことがないイースター市もあり、詳しくご紹介できないのが残念ですが、興味を持たれた方はぜひ足を運んでみてくださいね!
カルヴァリエンベルク・フェスト
🐰 Kalvarienbergfest
2023年3月30日(木)~4月9日(日)
毎日10:00~18:00 (入場無料)
あまり宣伝はされませんが、ウィーンで一番歴史のあるイースター市なのだそう。
近年は少しトーンダウンしているそうですが、また盛り返してほしい市です。
= 基本情報 =
Kalvarienberggasse, St.-Bartholomäus-Platz, 1170 Wien
www.kalvarienbergfest.at
フロリツドルフのイースター市
🐰 Ostermarkt Floridsdorf (Franz-Jonas-Platz)
2023年3月2日(木)~4月9日(日)
毎日8:30~19:00 (入場無料)
フロリツドルフの駅舎前に立つ小さな市です。子供用の遊具などもあります。
他のイースター市に比べると、ずいぶん長い期間開催されています。
= 基本情報 =
Franz-Jonas-Platz, 1210 Wien
meinkaufstadt.wien
プラーターのイースターフェスト
🐰 Osterfest im Prater
※ 2023年は開催情報を見つけられませんでした。
ここはイースターの市ではないですね。子供向けのイベントが充実しているそう。
今年訪ねるつもりが叶わず。来年ぜひ行ってみたいイベントです。
= 基本情報 =
Wiener Prater, 1020 Wien
www.praterwien.com
ノイゲボイデ城のイースター市
🐰 Schloss Neugebäude Ostermarkt
2023年3月30日(木)~4月2日(日)
3/30(木): 14:00~20:00
3/31(金): 14:00~20:00
4/1(土): 14:00~20:00
4/2(日): 10:00~19:00
歴史好きの方には興味深い場所かもしれません。
このノイゲボイデ城は16世紀末に建てられた中世の古城で、1593年に制作されたファルケンボルフの《ノイゲボイデ城近くの散歩道に立つ皇帝》という絵画に、このお城が描かれてるんですよね。
ここでいう皇帝は、神聖ローマ皇帝のルドルフ2世です。
歴史家に“まちがいなくヨーロッパ全君主の中でも指折りの奇人だった”などと書かれたりする、愛すべき変人(いい意味です)のルドルフ2世ですね。
このお城はその後荒廃し、弾薬庫などに使われていた時代もあったそうですが、2000年代に入ってようやく修復工事が始まったそうです。
現在のお城の姿と、400年前に描かれているお城のたたずまいがあまりに似ていて、ちょっとドキッとしましたね。時が止まっているような…。
手入れをされてこなかったために、却って昔の面影を残しているのかもしれません。
一度訪ねてみたい場所です。
= 基本情報 =
Otmar-Brix-Gasse 1, 1110 Wien
www.schlossneugebaeude.at
ヒルシュシュテッテン花壇庭園のイースター
🐰 Ostern in den Blumengärten Hirschstetten
2023年4月8日(土)~4月10日(月)
毎日9:00~18:00 (入場無料)
ウィーンの中心からは離れていますが、意外とファンの多い花壇庭園。
子供向けの遊具などもあり、子連れファミリーに優しいイベントのようです。
= 基本情報 =
Quadenstraße 15, 1220 Wien
www.wien.gv.at
おわりに
ウィーンはクリスマス市が有名ですが、クリスマスが荘厳・きらびやかなら、こちらは可憐で愛らしく、春の訪れを告げるのにふさわしい軽やかなお祭りです。
もしイースターエッグを買われたら、早速ネコヤナギを調達して(オーストリアでしたらこの時期、お花屋さんやスーパーに売られています)、飾りつけてみてくださいね!
一気にお部屋に春が訪れます。
桜や梅や桃といった春の“枝もの”を飾って春の訪れを楽しむ日本と、ネコヤナギにイースターエッグを飾って春を楽しむオーストリア、なんだか似ていますよね。
卵がここまで美しく変身できるとは…という卵の究極の姿には心奪われるものがあります。一年に2週間ほどしか開催されないイースター市ですが、この春の時期、もしウィーンを訪れる機会がありましたらぜひ訪ねてみてくださいね!
なお、上にご紹介したのはすべてウィーン市内のイベントですが、この時期、オーストリア各地でイースターをお祝いするイベントが開催されています。
私は行ったことがないためご紹介ができないのですが、オーストリア政府観光局の公式サイトに各地のイースター市に関する情報が載っていましたので、ここにもリンクを貼っておきますね。
コロナ禍でイースター市が相次いで開催中止になる前の情報なので既に古いですが、開催場所に関しては、来年以降も変わらないのではないかと思います。
オーストリアのイースターマーケット(オーストリア政府観光局公式サイト)