オーストリアではチップのことを、ドイツ語で「Trinkgeld(トリンクゲルト)」といいます。
直訳すると<飲み代>。昔は「これで飲み物でもどうぞ!」という感謝の気持ちを込めて渡していたのが由来なのだとか。
オーストリアでは、チップは義務ではありませんが、「ありがとう」の気持ちを表すマナーとして広く根づいています。
💡 目安は、合計金額の 10% 程度
とはいえ、実際の場面では…
- どんなときに渡せばいいの?
- どれくらいが妥当?
- スマートな渡し方って?
など、戸惑うことも多いですよね。
この記事では、オーストリア在住16年の筆者が、日常のリアルな体験をもとに
カフェ・レストラン・タクシー・ホテルなど、シーン別に「ちょうどいいチップの渡し方」をご紹介します。
観光でも長期滞在でも、知っておくと安心な情報ばかりです🌿
カフェやレストランでのチップの渡し方
オーストリアでは、レストランやカフェでのお会計時に、請求額に少し上乗せして支払うのが一般的です。
多くの場合、小数点以下を切り上げてキリのいい金額にすればOK。
ただし、数人分まとめてお会計するなどして金額が大きくなると、セント単位の切り上げだけでは「だいぶ少なすぎるかも?」ということも。
そんな時は、ざっくり 請求額 × 1.1(=10%上乗せ)くらいを目安にして、キリのいい金額に繰り上げるとスマートです。
💡 参考例
請求額 | チップ込み支払い額の目安 |
---|---|
8.6ユーロ | 9〜10ユーロ |
13.5ユーロ | 14〜15ユーロ |
43ユーロ | 45〜46ユーロ以上(※45でもOKですが、気持ち少なめな印象) |
97ユーロ | 100〜103ユーロ以上(※100でもOKですが、やや控えめな感じ) |
なんとなく、イメージつかめましたか?
ちなみに、マクドナルドやスタバなどセルフサービスのお店ではチップは不要です◎
満足できなくても“ゼロ”は避けたい?
サービスに不満があったときでも、「まったく渡さない」のは避けたほうがベターとされています。
たとえば、注文がものすご〜く遅かったり、ケーキにカビが…!(♡すめぺん♡体験済みです)なんて時でも、ほんの少しでも渡すのがスマートです。
とはいえ、「今日はもう無理!絶対払わん!」と決めても違法ではありませんのでご安心を(笑)。
学生さんや収入が限られている方は、チップを控えめにする or 渡さないという選択をされることも。
このあたりは、その人の事情や気持ちに合わせて、無理のない範囲で大丈夫です。
日本から来たばかりの方が、チップの習慣を知らずに渡さなかった…という場面にも何度も遭遇しましたが、それで店員さんが不機嫌になるというのは見たことがありません。
観光都市ウィーンでは、「外国の人だから知らないんだな」と寛容に受け取ってくれるケースが多いように感じます。
お会計のタイミングと流れ
日本と違い、オーストリアではテーブルでお会計を済ませるスタイルが基本です。
自分から声をかけないと、いつまでも気づいてもらえないことも…。
そんなときは、目を見て「Zahlen bitte!(ツァーレン・ビッテ=お会計お願いします)」とハッキリ呼びかけるのがコツ!
ちょっと勇気がいりますが、ここは思いきって♪
または、お財布を手に軽く持ち上げて「Please!(プリーズ)」と英語で声をかけるだけでも、ちゃんと伝わります◎
担当してくれていた店員さんに声をかけるのが基本ですが、間違って別のスタッフに声をかけても「呼んできますね!」と対応してくれるはずです。
チップの伝え方(現金)
◎ ぴったり払うとき
例: 13ユーロの請求 → 15ユーロを渡して「Stimmt so.(シュティムト・ゾー=おつりは結構です)」
◎ おつりが必要なとき
例: 13ユーロの請求 → 20ユーロ札を渡して「15 Euro bitte!(15ユーロでお願いします)」
ここでのポイントは、「合計15ユーロ払いたいから 15-13=2 で、チップは2ユーロになるな」などと、頭の中で正確なチップ代を計算しなくても大丈夫。
払いたい合計金額(上の例だと 15ユーロ)をそのまま伝えればOKです。
※ちなみに、ドイツ語で「ユーロ」は「オイロ」と発音します。
クレジットカード払いのとき
カードでも、チップ込みの金額を伝えるだけでOK。
店員さんがその金額を端末に入力してくれます。
例:
お客さん「15 Euro bitte!」
店員さん「Danke!(*チップを*ありがとうございます)」→ 端末に15ユーロ入力。
もし言葉で伝えるのが不安なら、お会計伝票に希望金額を書いて見せるという手もあります。
お会計伝票がフォルダに入っていたら?
お店によっては、小さなフォルダにお会計伝票を入れて渡されることがあります。
その場合は、チップを含めた合計金額をフォルダに入れて、そのまま席を立ってOK。
おつりが必要なときは、フォルダを渡して、おつりを受け取ってからチップを渡すという流れでも大丈夫です。
現金をテーブルに置いてお店を出るときは、店員さんに「Danke!(ありがとう)」と目を合わせて伝えるのがポイント!
「ここにお金置いてあるよ〜」という意思表示になりますし、食い逃げと間違われるのも防げます◎
実は「チップ前提」の価格設定?
カフェのメニューを見ていると、「なんか中途半端な金額だな〜」と思うこと、ありませんか?
たとえば…
- Melange(メランジェ): 3.90ユーロ
- Cappuccino(カプチーノ): 4.10ユーロ
- Cafe Latte(カフェラテ): 4.60ユーロ
実はこれ、チップを少し足して“ちょうどいい金額”にできるようにしてある場合もあるんです。
サッと一杯だけ飲んでお店を出るようなときは、難しく考えず、キリよく支払うとスマートな印象に。
- 3.90ユーロ → 4ユーロ
- 4.10ユーロ → 4.50ユーロ
- 4.60ユーロ → 5ユーロ
お金をカップのそばにそっと置いて、「Danke!(ありがとう)」と笑顔でひと声かければOK♪
ただし、現金を置いたまま席を立つときは、必ず声をかけてから出ましょう。
とはいえ、難しい…
こういう「さりげなくてスマートなチップの渡し方」って、実は在住歴が長くてもなかなか難しいものなんですよね…。
一生懸命 店員さんに声を張ってるつもりなのに、なかなか気づいてもらえない在住16年の♡すめぺん♡です…。笑
タクシーのチップはどうする?
オーストリアでタクシーに乗ったときも、チップを渡すのが一般的です。
目安は、料金の約10%。
とはいえ、正確に計算する必要はなし♪
たとえば、こんなふうにキリのいい金額でまとめて払うのがスマートです。
💡 参考例
請求額 | チップ込み支払い額の目安 |
---|---|
23ユーロ | 25ユーロ |
37ユーロ | 40ユーロ |
🚕 カード払いに注意!
オーストリアのタクシーは、カードが使える車と使えない車があります。
カードで払いたいときは、乗車前に「カードOKか?」を確認しておくのが安心◎
また、チップ込みで払うときは…
- 希望の合計金額を口頭で伝える(例:「25ユーロでお願いします」)
- 端末に表示された金額が合っているか、確認してからタッチ or 挿入!
焦らずゆっくりで大丈夫です♪
🧳 スーツケースを運んでもらったら?
荷物の積み下ろしを手伝ってくれたときは、
その親切に、1〜3ユーロほど心づけを添えると好印象。
スーツケースの数や重さにもよりますが、
ちょっとした気持ちが伝わると、お互いに気持ちよく終われますよ◎
公共トイレやお店のトイレでのチップ
オーストリアでは、公共トイレやカフェ・レストランのトイレなどで、
入り口に小皿が置かれていたり、係の人が座っていたりすることがあります。
そんなときは、50セント程度のチップを入れるのがマナーです💡
「チップ=サービス料」というよりは、
「清掃への感謝の気持ち」として渡すイメージですね✨
💡 小銭を持っていないと…
「2セントしかなかったから入れようとしたら、
“そんなのいらない!”と突き返された…」なんてエピソードも😅
もちろん、チップがなくても使わせてもらえることは多いですが、
つねに小銭を準備しておくと安心ですね◎
オーストリアのトイレ事情については、以下の記事で詳しく解説しています!👇

ホテルでのチップ事情
ホテルでも、チップは義務ではありませんが、
ちょっとした心づけを渡すと、スマートで気持ちのいいやりとりになります✨
シーン別に目安とタイミングをご紹介しますね👇
🧳 ポーター(荷物を運んでくれる人)
目安: 荷物1つにつき 1〜2ユーロ
タイミング: 部屋まで荷物を運んでもらったその場で手渡しするのが一般的です。
🧹 ハウスキーピング(お部屋の清掃スタッフ)
目安: 1泊につき 1〜2ユーロ
タイミング: 毎日、またはチェックアウト時にまとめて置くのもOK。
💡 ベッドのサイドテーブルなど、目立つ場所に置くとわかりやすいです。
※枕の下やスーツケースの近くなど、紛らわしい場所は避けるのがベター!
🍽️ ルームサービスの配膳スタッフ
目安: 高級ホテルなどでは注文金額の5〜10%、または 1〜2ユーロ程度
タイミング: 料理を受け取ったその場で手渡しが一般的です。
🎩 コンシェルジュ
目安: 特別なお願いをしたときに 5〜15ユーロ程度
たとえば…
🎟️ 入手困難なオペラのチケットを取ってもらった
🍽️ 人気レストランの予約をしてもらった
など、労力や手間に見合ったお礼を伝えるイメージです。
タイミング: サービスを受けたあと、またはチェックアウト時に渡すと◎
💡 チップの渡し方のポイント
- 現金が基本!
小額の紙幣やコインを用意しておくと安心です。 - カード払いでも?
ホテルによってはカード決済時にチップを追加できる場合もありますが、
現金で渡すほうが、お礼の気持ちを伝えたい担当スタッフに直接渡せるので確実です。
その他のシーンもチェック!
🍽 ケータリングの配達員さんには?
最近は「レストランより宅配派!」という方も増えていますよね。
注文時にカード決済するのが一般的ですが…
📌 配達員さんに直接、1〜2ユーロを現金で渡すと、とっても喜ばれます✨
量が多かったり、天候が悪かったりした日は、もう少し気持ちをプラスするのも素敵な心遣い。
💡 たとえば、こんな日は…
- ☔ 雨の日や極寒の日
- ⚽ スポーツのビッグイベント放映中(W杯の決勝戦とか!)
→ 2〜3ユーロくらい渡すと、思いやりがしっかり伝わりますよ。
🛵 ちなみに…
配送料が別途かかっていても、それはお店への手数料。
配達員さんにはほとんど届かないのが現状です。
📦 郵便や宅配便の配達員さんには?
Amazonなどの配達員さんに毎回チップを渡す人も、まれにいますが…
これはオーストリアでは一般的ではありません。
🎁 特別なタイミングには…?
普段はチップを渡さない郵便や宅配便の配達員さんにも、
クリスマスや年末などの節目に「いつもありがとう」の気持ちを込めて、10ユーロほどを渡すご家庭もあります。
ただ、この一年に一度の心づかいも、最近では少しずつ減ってきた印象です。
というのも、以前は「いつもの配達員さん」が決まっていて、
顔なじみになることも多かったのですが、
最近は宅配サービスの多様化で、毎回違う配達員さんが来ることがほとんどに。
そんな背景もあって、感謝を形にする機会自体が減ってきているのかもしれませんね。
✂️ 美容院やサロンでは?
こちらも、チップの目安は料金の約10%。
とはいえ、飲食店のように細かく計算する必要はありません。
キリのいい金額にまとめて渡すのが、自然でスマートなスタイルです。
💡 たとえば…
- 38ユーロ → 40ユーロ
- 82ユーロ → 85ユーロ
- 97ユーロ → 100ユーロ
気持ちよく仕上げてもらったときは、笑顔と一緒に感謝を伝えましょう♪
🌭 アイス屋さんやソーセージスタンドでは?
テイクアウト専門のスタンドでは、チップは義務ではありませんが、
「おつりはいいですよ(=Das stimmt so.)」と伝えるのが、オーストリア流のスマートなやりとり。
🍦 たとえば…
アイスが2.2ユーロだったら、2.5ユーロを渡して
「Das stimmt so.(ダス・シュティムト・ゾー)」と笑顔で一言。
もちろん強制ではありませんが、
ちょっとした心づかいが、あたたかい空気を生んでくれますよ😊
🎭 オペラ座のプログラムは?
オペラ座やコンサートホールでは、ホールの入口で案内係さんが座席まで案内してくれることがあります。
このとき、チップは基本的に不要ですが、
その係の方がプログラム(演目の冊子)を販売していることがよくあります。
📘 たとえば…
プログラムが4.5ユーロだったら、5ユーロを渡して
「おつりはけっこうです(=Das stimmt so.)」と伝えるとスマート✨
📌もちろん、プログラムが必要なければ買わなくてもOK!
在住者の中には「もう何冊も持ってるし〜」という方も多いですよね。
🚛 引っ越し業者や家具組立のスタッフさんには?
引っ越しや家具の搬入・組み立てなど、重労働をしてくれるスタッフさんにも、ちょっとしたチップを渡すと喜ばれます。
💡目安: 1人につき 5ユーロ前後
家具の数や作業時間によって、気持ちを上乗せしても◎
📦 たとえば…
- 大型家具を階段で運んでもらった
- 家電を丁寧に設置してもらった
- 長時間がかりの組み立てをしてもらった
など、体を使って頑張ってくれたな〜と感じたら、「ありがとう」の気持ちを形にして渡してみてくださいね。
最後にまとめ🌿
最初は、「どの場面で、いくら渡せばいいの?!」と戸惑いがちなチップ文化。
実を言うと、私も以前は(今もかも?!)
「もういっそ、料金に含めてチップ制やめてくれたらラクなのに…」なんて思っていました😅
でも今では、チップがあれば簡単に“ありがとう”の気持ちを伝えられるんだな、と感じるように。
気持ちとふところ具合に余裕があるときは🤭、無理のない範囲で感謝の気持ちを形にして渡すようになりました。
🗾 ちなみに…
日本では、チップを渡さなくても皆さんが本当に誠実に一生懸命お仕事をしてくださいますよね。
そういう文化に育った身としては、「お金だけじゃないよね」という思いが湧くことも…。
でも、“郷に入れば郷に従え”ですね!
こちらでは、言葉にしにくい“ありがとう”をチップで表すという感覚も、少しずつしっくりくるようになってきました。
スマートに、でも無理せず。
自分なりのスタイルで、チップ文化と付き合っていけたら素敵ですね🌸