長い休暇を利用した日本への一時帰国。
夏であったり冬であったり、それぞれのご家庭の事情にもよりますが、海外在住の皆さんにはお馴染みの年中行事ですよね。
その一時帰国なんですが、お子さんを連れて母親(あるいは父親)だけで日本に一時帰国しようと計画されている方、たくさんいらっしゃることと思いますが、要注意です!!
いよいよ空港に到着し、いざ日本への帰国便に乗り込もうと出国手続きに向かったところ、“子供を不法に連れ去ろうとしている誘拐犯(自分の子供でも)”の疑いをかけられ、別室で取調べに…なんていう、思いもよらない展開になってしまうことがあるそうなんです!
国際結婚をされている方に限らず、企業の駐在員として海外に滞在されている方の奥さんが、お子さんだけ連れて一時帰国…なんていう場合も注意が必要です。
こんな話、数年前までは聞いたこともありませんでしたが、『ハーグ条約(“国境を超えた子供の不法な連れ去り”に適切に対処できるよう定めた国際条約)』という国際的な取り決めに基づいて行われる審査だそうで、子供の国境を超えた移動の際の取り締まりが、年々厳しくなってきているんですね…。
せっかく楽しいはずの休暇が、こんな取調室で始まってしまうのを避けるため、片方の親のみで子供を連れて日本へ一時帰国する場合、何を用意していくべきなのか、下に詳しくみていきたいと思います。
そもそも『ハーグ条約』って何?
『ハーグ条約』の正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」というそうです。
片方の親が、もう片方の親の同意を得ることなく、子供が元々暮らしていた国から不法に連れ去ったり、あるいは、約束の期限がきても子供を元の国に帰さなかったり、といった場合。
そんな場合に生じ得る様々な悪影響から子供を守るため、子供を速やかに元いた国に戻す(戻した上で、つまり原状回復をした上で、改めて今後のための適切な判断を行う、といった感じですね)ための支援をする、その国際協力の仕組みについて定められているのが『ハーグ条約』なのだそうです。
自分の母国が『ハーグ条約』に加盟していないと、離婚などに際して、片方の親が子供を自分の母国へ連れて帰る、ということ自体が認められないケースがあったそうで、そんな問題に対処するため、日本も2014年に加盟する運びとなったそう。
確かに大昔、“日本は『ハーグ条約』を締結してないんで、国際結婚で離婚となった場合、子供を日本に連れて帰るのが難しい”という話を聞いたことがありました。
そして、“おちおち離婚もできないわ…”と思ったりしたものでした。
2014年の条約締結と共に問題も解消され、よかったよかった、という話ですが、私たち(ただ単純に、日本で子供と夏休みを過ごしたいだけ)に残されているのは、では、オーストリアから出国する場合(シェンゲン域内の経由便を利用される方は、その経由国から出国ということになりますが)、空港の出国手続きで“私は子供を連れ去ろうとしている訳ではない”と、どのように証明するかですよね。
渡航同意書を準備しよう
“子供を連れ去ろうとしている訳ではない”の証明方法ですが、国際的に定められた世界共通の“定型”方法がある訳ではありません。
出入国に際し、「渡航同意書(一方の親が子供を連れて出入国することを、もう片方の親が同意していることを示す文書)」の提示が求められることがある、というのが、だいたいどこの国にも共通した対応ですが、英文ではなく、国指定の言語による文書が求められたり、大使館や公証役場での認証が必要であったり、国によってルールは様々です。
対象となる子供の年齢も、日本の外務省発行のパンフレット には<16歳未満の子どもが対象>と記載されていますが、海外では14歳未満となっていたり20歳未満となっていたり、こちらも国によって様々に変わります。
ですので、自分が子供を連れて出入国手続きをする国の規定を、事前によく調べておく必要がありますが、私が、
オーストリア ↔ ドイツのフランクフルト経由 ↔ 日本 のルート、および、
オーストリア ↔ フィンランドのヘルシンキ経由 ↔ 日本 のルート、
で、ヨーロッパと日本を行き来した際(つまり、出入国手続きをしたのは、日本以外だと、ドイツとフィンランドになりますが)に事前に準備した書類、
これだけそろえておけば出国・入国の際、特に何も言われなかったという書類を、参考のために書いておきますね。
- 渡航同意書(英語/夫のサイン および 電話番号が記載されているもの ※下の項目で説明しますね)
- 夫のパスポート のコピー(写真のページ)
- 子供の出生証明書 のコピー(オーストリアの出生証明書です)
- 夫・私・子供の各 住民登録票 のコピー(Bestätigung der Meldung)
上記の書類に加えて私の場合(まぁ、ほぼ絶対必要ないですが)、ビデオまで用意しちゃったんですよね。
我ながら、何でそんなことを突然思いついたのか忘れましたが、上記 書類をそろえたところで、“これだけで、絶対に連れ去りじゃないって証明にならなくない??”って疑問に思えてしまいまして…。
“夫の渡航同意書へのサイン”だけ若干難易度が高いですが、本気で子供を連れ去ろうとしている人だって、下3点の書類などは、簡単にそろえられるでしょうし。
そんな訳で、“疑われる余地を限りなくゼロに近づけるため、ビデオ撮ってこ♪”と思いついた訳です、まぁこれまでのところ、すべて無駄になってますが。w
スマホで撮影したビデオの内容は、ざっとこんな感じ。
子供を抱いた夫が、
My name is 〇〇〇〇〇(夫の名前).
I’m the father of 〇〇〇〇〇(子供の名前).
I agree that she will fly with her mother, ○○○○○(私<妻>の名前)to Japan on July 13, 2019.
とカメラの前で言う。それだけ。w
パスポート写真に写っている顔と同じ人間がしゃべっている訳なので、これなら少しは、真実味がアップするかな、と…。
というのも、空港で「確認のために、ここで旦那に電話して」などと言われたりするのを、できるだけ避けたかったんですよね。
オーストリア国外の電話事情っていまいちよくわからず、思いの外、全然夫につながらないってことが起こらないとも限りませんし、夫が大事な会議中で電話に出られない…ってこともあり得ますし、こんなゴタゴタで乗り継ぎ便を逃したりすると、特に赤ちゃん連れにとっては、もう想像を絶する大惨事な訳ですよ。
まぁ、ほぼ無駄になるかと思いますが、“疑われる余地を限りなくゼロに近づけたい!”と思われる同志の方は、試してみてください。w
渡航同意書のフォーマット
渡航同意書は、国による規制が特にない場合、自分で任意の同意書を作成することになります。
JALさんが配布してくださっているこちらのフォーマットは、コピーライト©なども入っていなくて、とても使いやすいです。
18歳未満の渡航同意書(英語)– PDFファイル
18歳未満の渡航同意書 記入例 – PDFファイル
私の場合、ドイツから出国したにもかかわらず、この JALさんの任意の同意書で問題ありませんでしたが、JTBさん(JALさんではなく、JTBさんです)が2018年7月にまとめられているより新しい情報によると、ドイツって指定のフォーマットができたんですね…。
まぁ、2019年現在、私は任意の同意書で問題なくドイツを出入国できましたが、皆さんはより新しい情報を参考にされてください。
世界中の渡航同意書作成に関する条件については、下のJTBさんのサイトで、わかりやすく詳細に説明されています。
未成年の渡航同意書に関する条件のある国 (JTB)- PDFファイル
(このJTBさんのサイトからも、任意の渡航同意書がダウンロードできるんですが(上にリンクを貼ったJALさんの同意書とほぼ同じもの)、JTBさんの方には書類下にそっとコピーライト© が書き添えられているんですよね。なんとなく「今回、JTBさんを利用した訳でもないのに、使っちゃっていいのかな…」という後ろめたい気持ちになり、コピーライト©無しのJALさんのものを便利に使わせていただいています…。)
JTBは旅行業者さんですので、より正確を期するためには公的機関、つまり、自分が出入国する予定の在日本大使館、あるいは滞在国(海外)にある日本大使館、政府観光局などに問い合わせてみるのがよいかと思います。
おまけ: “出入国手続きをする国”の意味
私の場合がそうなのですが、オーストリア在住にもかかわらず、日本帰国に際して飛行機を利用する際、出入国手続きをするのはドイツであったり、フィンランドであったりで、私の在住国・オーストリアではないんですよね。
その理由は、私がいつも日本とオーストリアの直行便を利用せず、ドイツのフランクフルト経由、あるいはフィンランドのヘルシンキ経由のフライトを利用するから。
(オーストリア航空さんが中部国際空港に直接乗り入れてくださったら、もう一にも二にも、何の迷いもなくオーストリア航空さんを利用するのですが…。東京-名古屋の乗り継ぎ接続が悪くて、成田<or 羽田>経由も利用できないんですよねぇ。涙)
いわゆる“シェンゲン協定(ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)”に加盟している国家間を移動する場合は、まさに“国境検査なしで国境を超えることを許可する協定”と明記されていますように、国境検査 つまり 出入国審査がありません。
出入国審査が必要になるのは、シェンゲン協定加盟国外からシェンゲン域内に入る場合、そしてシェンゲン域外に出る場合です。
つまり、私の一時帰国の例でいうと、
オーストリア → ドイツ(シェンゲン域から出るため、ここ<ドイツ>で出国審査)→ 日本
または、
日本 → ドイツ(シェンゲン域に入るため、ここ<ドイツ>で入国審査)→ オーストリア
ということになり、オーストリアでは何の審査もありません。
という訳で、皆さんも渡航同意書を準備される場合は、自分が出入国手続きをする予定の国はどこなのかに留意する必要があります。とは言いつつも、私のように“オーストリア在住”などと在留する国が決まっている方は、在留国の条件もあわせて確認しておくのがベストですね。
ちなみに、ヨーロッパの多くの国が加盟しているシェンゲン協定ですが、イギリスを始め、アイルランド、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、キプロスといった、実はシェンゲン協定に加盟していない国というのが、ちらほらあります。
EUには加盟しているのに(イギリスはまもなく離脱するのかもしれませんが…2019年9月記 離脱しましたが)、シェンゲン協定には加盟していないという、ちょっとややこしい国々ですね。
ヨーロッパのシェンゲン協定加盟国と、これら非加盟国間の移動には、やはり普通に出入国手続きがありますので、ここはご注意ください。
おわりに
渡航同意書等の準備方法について書いてみましたが、実は私自身、出入国の際に毎回提示を求められた訳ではありません。
“赤ちゃん連れでは大変だろう”と、姉が日本から迎えに来て(観光も兼ねて)、成人女性二人+赤ちゃん連れで帰国したこともありますが、
機内持ち込み手荷物もなんだかどっさり抱えているし、出国手続き前には子供がぐずって床に突っ伏して泣いているし、怪しいといえば相当怪しい 赤ちゃん連れ女二人組 の出国手続き(in ドイツ)だったことと思いますが、その時も、“赤ちゃん大変だから、窓口開けてあげるから こっちおいで”と却って親切にしてもらったぐらいで、渡航同意書などは求められませんでした。
この『ハーグ条約』に基づいた審査があるかどうかは、まぁ今のところ、運というか、あったりなかったり…というのが現状なようですが、国際結婚の数自体も増加していますし、この先たぶんですが、審査も徐々に厳しくなってくるのでは…とも予想されます。
いざ審査という際に何も準備しておらず、いらぬトラブルに巻き込まれてしまう、ということのないよう(これ、赤ちゃん連れでトラブルに巻き込まれたりしたら、本当に大変ですので…)、日本への一時帰国の際には、この『ハーグ条約』と渡航同意書の存在をぜひ思い出して、どうぞ適宜 適切な書類を準備してのぞまれてくださいね!
それでは、良いご旅行を…!!